BEAUTY-1 「野呂一生と来ればカシオペアである」。管理人はずっとそう思ってきたが,この持論に訂正を加えたい。
 「野呂一生と来ればカシオペアである。しかしカシオペア以上に,野呂一生と来れば『野呂一生インスピリッツ』である」。

 カシオペアの活動休止宣言後,野呂一生がバンド活動の母体としたのが,エレクトリックギター野呂一生ドラム神保彰ベース箭島裕治エレクトリックピアノ扇谷研人シンセサイザー林良から成る5人組「野呂一生インスピリッツ」である。

 カシオペアから神保彰を,ソロ・プロジェクトから林良を連れてきたバンドのメンバー構成からして「野呂一生インスピリッツ」は,野呂一生そのまんまのカシオペアと,ソロ・アルバムでは意識的にカシオペアっぽさを消してきた野呂一生が有する2つの音楽性を1つにドッキングさせて凝縮したバンドこそが「野呂一生インスピリッツ」なのである。

 事実「INSPIRITS」というバンド名は「ISSEI NOROの頭文字(IN)+精神(SPIRITS)から取られているし「野呂一生インスピリッツ」で発表してきた全楽曲が野呂一生の作編曲。いくら人気ギタリストとはいえ,徹頭徹尾“野呂一生づくし”なのが凄すぎる〜。

 『BEAUTY』(以下『ビューティー』)を聴いてみた。第一印象は「カシオペアっぽい。看板だけを掛け変えたカシオペアの復活?」な印象であった。
 しか〜し『ビューティー』を聴き込んでゆくにつれ,カシオペアのサウンド・イメージから離れ出し,野呂一生ソロ・アルバムに寄り出した。

 ズバリ「野呂一生インスピリッツ」の真実とは,野呂一生ソロ・プロジェクトを根っ子にしたバンドである。「野呂一生インスピリッツ」の真実とは「野呂一生 & フレンズ」なワンマン・バンドなのである。

 この感覚は長年カシオペアを聴き続けてきたマニアには重要なファクターとなる。なぜならカシオペア・サウンドの真髄とは「4人の個性が溶け合った鉄壁のアンサンブル」にあるからだ。
 1st→2nd→3rdとメンバー・チェンジに伴なってバンド・サウンドが変化してきた。だからカシオペア・ファンは1st→2nd→3rdの優劣について論戦するのが常なのだ。

 その意味で「野呂一生インスピリッツ」の場合,向谷実櫻井哲夫日山正明ナルチョ熊谷徳明大高清美のような灰汁がない。
 (ワンマン・バンドの宿命であるが)議論以前に,箭島裕治扇谷研人林良の個性が薄い。

BEAUTY-2 3人ともバカテクなスタジオ・ミュージシャンだと思うが,個性を主張するでも野呂一生にぶつかってみるでもなく,スタジオ・ミュージシャンそのまんまな,自らは一歩引いて野呂一生メロディー・ラインを前面に押し出した演奏に終始している。
 ぶっちゃけ,ベースエレクトリックピアノシンセサイザーのバンド内での役割はレギュラー・メンバーとしての音使いではなくサポート・メンバーとしての音使いだと思う。

 だ・か・ら「野呂一生カシオペア」の法則からして「野呂一生インスピリッツ」にカシオペアを感じたのも当然であって『ビューティー』の深い部分に耳を向けると,そこにはカシオペアとは全く異なる,野呂一生の新しいソロ・アルバムの世界が聴こえてくる。

 「野呂一生カシオペア野呂一生」の新法則=「ISSEI NORO INSPIRITS」!

 「野呂一生インスピリッツ」が「第二のカシオペア」になる日,つまり本当の意味でバンドになる日が来るとすれば,それは箭島裕治扇谷研人林良の“アドリブ”がフィーチャリングされた時ではなく,箭島裕治扇谷研人林良の個性を生かした“アンサンブル”が鳴りだす時であろう。

  01. WIND'S COLOR
  02. APHRODITE
  03. HIGH-FIVE
  04. A BEAUTIFUL THING
  05. PURPLE IN THE SKY
  06. MEMORY DAYS
  07. THE NIGHT VIEW
  08. SWEETNESS
  09. SQUEEZE
  10. A PIECE OF THE DREAM

(ハッツ・アンリミテッド/HATS UNLIMITED 2011年発売/HUCD-10087)

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