
圧倒的な量だけではない。むしろ質で語られるべきジャズ・ジャイアンツの一人である。
そう。エディ・ゴメスこそが,ビル・エヴァンス・トリオの最長ベーシストである。あるいはエディ・ゴメスこそが,チック・コリアの絶頂期のソロ活動を支え続けた稀代の名手なのである。
だからエディ・ゴメスと来れば,どうしても“生粋の”ダブル・ベースをブイブイいわせるイメージが強かったのだが,管理人はエディ・ゴメスのたった1枚のリーダー・アルバムを聴いて「エディ・ゴメス=エレアコ・ベーシスト」のイメージの方が強くなってしまった。
そのアルバムこそが『STREET SMART』(以下『ストリート・スマート』)である。『ストリート・スマート』を買って聴いて本当に驚いた。仮に『ストリート・スマート』をビル・エヴァンスが聴いたとしたら,エディ・ゴメスは“即刻クビ”になってしまったかもしれないと思ったのだ。
『ストリート・スマート』には,それこそ「バブルの音」がする。これって,実は『ストリート・スマート』のメンバーが豪華すぎるのだが,そのことを直接的に言っているのではない。そうではなく『ストリート・スマート』の「バブルの音」とは,ズバリ“売れ線”なのである。
そう。エディ・ゴメスの“生粋の”ダブル・ベースがアンプリファイドされて,王道フュージョンをフロント楽器以上の存在感でリードしている。
具体的には,ジャズにしては1曲毎にテーマがしっかり主張しているし,メンバーのソロも即興的ではなく,曲の流れを考えた短めのアドリブでまとまりがある。
ジャズ系のFMラジオで『ストリート・スマート』の中から数曲が一部分,番組内のジングルとして使われていたことも相まって,レーベルとしてエディ・ゴメスを(あるいは同時進行中だった「ザ・ガッド・ギャング」を)積極的に売りに出していた時の“音の香り”がするのだ。
これはどうしても主観的な話で終わるしかないのだが,エディ・ゴメスのダブル・ベースが“電化”されてしまった瞬間,エディ・ゴメスの「別人格」が“起動”してしまった。そんな感じがするのである。
エディ・ゴメスのアンプリファイドされた「エレアコ」ダブル・ベースが“ビンビンに”GROOVEしまくっている!
エディ・ゴメスのダブル・ベースが“鳴れば鳴るほど”ジャズから遠ざかっていく感じ!?
そう。『ストリート・スマート』での,ジャズから遠ざかっていく,エディ・ゴメスがトラウマとなってしまったのか? 最近のエディ・ゴメスの演奏にはどうにも感情移入できないままでいる。
管理人にとってエディ・ゴメスは『ストリート・スマート』の迷演?で止まってしまっているのが無念である。
幸い『ストリート・スマート』以前のエディ・ゴメスの演奏は,昔のまんまで聴き入れる。
やっぱりビル・エヴァンスとチック・コリアに見初められたエディ・ゴメスは素ん晴らしいジャズ・ベーシストだと思う。

「ザ・ガッド・ギャング」との個性の違いは「ザ・ガッド・ギャング」は,スティーブ・ガッドがメインでエディ・ゴメスがサブ。『ストリート・スマート』は,エディ・ゴメスがメインでスティーブ・ガッドがサブで間違いなし。
そんな“エディ・ゴメス一色”のアルバムの中にあって,ディック・オーツのソプラノとテナーばかりを追いかけてリピートするようになってしまった。
なのにディック・オーツ。国内盤のアルバムは出ていないようのです。こんなにも素晴らしいサックス・プレイヤーを眠らせておくなんて…。エディ・ゴメスさん,またディック・オーツと共演したアルバムを作ってくださ〜い。これだけが言いたかったの巻〜。
01. Street Smart
02. Lorenzo(For Lorenzo Homar)
03. I'Caramba
04. It Was You All Along
05. Blues Period
06. Bella Horizonte
07. Carmen's Song
08. Double Entendre
09. Besame Mucho
(EPIC/SONY/A TOUCH 1989年発売/28・8P-5303)
(ライナーノーツ/小川隆夫,エディ・ゴメス)
(ライナーノーツ/小川隆夫,エディ・ゴメス)