
しかし「怒涛の三部作」は,今振り返ると『SEVEN DAYS OF FALLING』(以下『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』)で幕開けする「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)第二章」の序章にすぎなかった。
“最後にして最高の”ジャズ・アルバムの『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→「ロックするピアノ・トリオ」革命の『GOOD MORNING SUSIE SOHO』→時代の最先端を行く非ジャズ・ピアノの『STRANGE PLACE FOR SNOW』。
それら「怒涛の三部作」で築き上げた1枚1枚の特長を全ての面で包含し,凌駕している。まさか『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』のようなアルバムが誕生するとは思ってもいなかった。
そう。『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』における「e.s.t.」UPDATEの要因とは,トリオの中で一人突出していたエスビョルン・スヴェンソンのピアノに,ベースのダン・ベルグルンドとドラムのマグヌス・オストラムが追いつき覚醒した,3人が3人とも主役を張れる,バランスの取れたトリオ・ミュージック。
言ってみれば「e.s.t.」がSMAPのようなキャラクターを発揮し始めた新次元のグループ・サウンドへと変化したと思う。
ただし,多分,事実ではない。ベースのダン・ベルグルンドとドラムのマグヌス・オストラムの素晴らしさは『E.S.T. LIVE』を聴き直せばすぐに分かる。
単純に「キース・ジャレット命」の管理人がエスビョルン・スヴェンソンだけを偏重してきたにすぎない。
ダン・ベルグルンドのディストーションをかけたウッド・ベースはノイジーなロック・ギターのような演奏である。そのくせアルコが抜群に上手で正確無比な音取りは驚異のジャズ・ベースそのものである。
マグヌス・オストラムのドラムは,繊細なジャズであり大胆なテクノでもある。非常にドライで硬いビートを生み出している。

そのエキサイティングなリズム隊の上に,エスビョルン・スヴェンソンの「詩的でミニマルでアンビエントな」ピアノを重ねるのが「e.s.t.」のアイデンティティなのである。
『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』を聴けば聴くほど「e.s.t.」のメンバーはこの3人でなければならないと強く思うようになった。
『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』がきっかけとなり,自分の中の「e.s.t.」への印象が変化したと思う。エスビョルン・スヴェンソンの斬新なピアノを聴くという態度から「e.s.t.」というピアノ・トリオと向き合うようになった。
ズバリ,管理にとって『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』とは「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の“ピアノ・トリオ”胎動作なのである。
01. Ballad For The Unborn
02. Seven Days Of Falling
03. Mingle In The Mincing-Machine
04. Evening In Atlantis
05. Did They Ever Tell Consteau?
06. Believe Beleft Below
07. Elevation Of Love
08. In My Garage
09. Why She Couldn't Come?
10. O.D.R.I.P./Love Is Real
(ソニー/SUPER STUDIO GUL 2003年発売/SICP-436)
(ライナーノーツ/渡辺亨)
(ライナーノーツ/渡辺亨)
コメント