
つまりは「ナベサダ・フュージョン,ここに極まりけり!」な豪華絢爛な1枚なのであるが,実際に聴いた『スウィート・ディール』の印象はかなりフュージョンからかなり離れて“ジャズっぽい”。
『スウィート・ディール』録音の時点で,すでにコイノニアは活動を休止し,イエロー・ジャケッツも突然変異なジャズ・ユニットと化していたのだから『スウィート・ディール』が“ジャズっぽい”のも理解できる。管理人はそう思って楽しんでいた。
『スウィート・ディール』はジャズとフュージョンが見事に融合した『フロントシート』の続編に当たる。
しかし『スウィート・ディール』の真実とは『フロントシート』の続編にして『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』の前作にも当たる。
『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』を聴き終えて「あっ,これだったんだ」と思った経験がある。『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』の中に『スウィート・ディール』のモチーフが残されている。
『スウィート・ディール』〜『ア・ナイト・ウィズ・ストリングス』へと流れる「ゴキゲン・フュージョンなのに“ジャズっぽい”」アンサンブルのキーマン。それがピーター・アースキンの存在にある。
ジャズとフュージョンの両方で大活躍+ビッグ・バンドとスモール・コンボの両方で大活躍な,ソロ以上に全体のアンサンブルに気を配る“JAZZYな”ドラマーがピーター・アースキン“その人”なのであった。
『スウィート・ディール』のハイライトは【EARLY SPRING】と【CYCLING】である。
“先頭でリードしつつ後方からも見守っている”ピーター・アースキンのドラミングが素晴らしい。そこにジョン・パティトゥッチである。全てはラッセル・フェランテのハイセンスなのである。

3人のプロデューサーによる『スウィート・ディール』のサウンドメイクは文句のつけようがない。ジャズの良さとフュージョンの良さが高次元で融合した名盤である。
ただし,本来そこにメインであるはずの渡辺貞夫のアルト・サックスがわずかに一歩だけ引っ込んでいる。もしやナベサダ自身が極上のバック・サウンドに惚れ込み,バックの名演をファンのみんなにも聴かせたかったのかなぁ。
01. Passing By
02. Sweet Deal
03. Early Spring
04. After Goodbye
05. With The Wind
06. Catch Me In The Sun
07. Old Photograph
08. As You Say
09. Only Love
10. Blue On Green
11. Masai Talk
12. Cycling
(エレクトラ/ELEKTRA 1991年発売/WPCP-4400)
コメント一覧 (4)
前作のパティ オースティンほど話題にはのぼらなかったけど、ボーカル曲も秀逸で、ロビー ブキャナンの存在を感じます。
マイケル ランドゥのギターが心に響く「ブルー オン グリーン」て終わるのが理想で、続くマサイトークとサイクリングはボーナストラック的に楽しんでいました。が、おっしゃる通りピーターアースキンの存在を考えると、最後まで本編として拝聴するのが正当なのかもしれませんね。
タイトルは金の型押し文字で間違いありません。ゴージャスなサウンドも金の型押しサックスで間違いありません。
『SWEET DEAL』でLAのスーパー・フュージョン・プレイヤーたちとのレコーディングも最後になりました。通算50枚目とは知りませんでしたが一つの区切りとしての集大成なのでしょう。それ位に素晴らしすぎるサウンドにデレデレしてしまいます。
確かにマイケル・ランドゥの【BLUE ON GREEN】はラスト曲にもふさわしい出来映えです。【MASAI TALK】はナベサダの新曲ではなく数年来の持ち曲で,以前からライブでは演奏されていましたし。でも個人的にはピーター・アースキンらしい【CYCLING】は譲れません。名演です。
とは言いつつも【CYCLING】が素晴らしいのはラッセル・フェランテのおかげだと思っております。フェランテがナベサダとアースキンの縁結び役ですね。
おおっと,ロビー・ブキャナンのプロデュース曲も好きですよ。ボーカル・ナンバーは正直,AOR系ではなく,もっとJAZZYだったら良かったのにと思います。辛口ですみません。
以降はNY、ブラジル、国内のビバッブ、ストリングス、ビックバンドライブetc.ですから。バーブ期が長かったのも関係しているのでしょうか。
ということは過日のカリフォルニアシャワー2017は画期的だったのですね。
もっと言えば『SWEET DEAL』はLAフュージョンでの最終作にしてワーナー時代の最終作なのです(『A NIGHT WITH STRINGS』は企画盤ですから)。
ヴァーブというレーベルは自分の会社所属のミュージシャンと共演させたがります。尤も,ナベサダもそれを承知で移籍したわけで,ヴァーブにもいいアルバムが多いですし,これはこれで楽しみました。
「カリフォルニアシャワー2017」は画期的でしたね。数年前からラッセル・フェランテとのコンビは復活しましたので,次はロビー・ブキャナン復活!?