「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の“最高傑作”『VIATICUM』に『LIVE IN BERLIN』をカップリングして新たに再発?されたのが『VIATICUM+LIVE IN BERLIN』(以下『ヴァイアティカム+ライヴ』)である。
『VIATICUM』が素晴らしいのは言うまでもない。そんな大名盤に「e.s.t.」絶頂期のライブ盤がカップリングされたのだから,これ以上何を望めよう。
管理人は『ヴァイアティカム+ライヴ』リリースの意味とは「e.s.t.」のファン向けという以上に,エスビョルン・スヴェンソン亡き後,喪失感を覚えていたダン・ベルグルンドとマグヌス・オストラムを慰めるため,そして2人へ再始動を促すための企画ものだと思っている。
そんな企画ものの性質上『VIATICUM』については『ヴァイアティカム』批評を参照していただくとして,ここでは『LIVE IN BERLIN』批評についてのみ記すこととする。
『LIVE IN BERLIN』を聴いて,まず痛感したのは「e.s.t.」は3ピースのバンドだったという事実だ。
個人的に「e.s.t.」がバンド・サウンドを前面に押し出してきたのは『SEVEN DAYS OF FALLING』からだと思っているが『LIVE IN BERLIN』の壮絶なライブを聴き終えて,改めて「e.s.t.」が「3つの肉体,6本の腕,1つの頭脳」と称される理由を鑑みる気分がした
これは『LIVE IN BERLIN』が,キース・ジャレット・トリオと同じ,ピアノ・トリオのライブ盤だから余計に感じるのだろうが,個性の強い3人のせめぎ合いで芸術性をぐいぐいと高みに持っていこうとするキース・ジャレットに対し,エスビョルン・スヴェンソンは個人の個性以上にバンドとしての個性を追及している。
「e.s.t.」にあって他のピアノ・トリオに無いもの。それはそれぞれの曲に対し,バンドとしてどうプレイするか,それがメンバー間で合意形成できている点にある。
その“暗黙の了解”とか“阿吽の呼吸”が蜜だからこそ,アドリブの自由度が高い。毎回の演奏が予定調和で終わらない。いつでもリラックスと緊張感が程よく保たれているように聴こえる。
その意味で『LIVE IN BERLIN』は,普段と何ら変わらない「e.s.t.」の1回のライブの記録のように思う。
そう。『LIVE IN BERLIN』は,格段に素晴らしい決定的なライブではない。収録曲4曲,演奏時間も40分。どちらかと言えば単体でリリースしようにもできない「帯に短したすきに長し」的な音源集であって,オフィシャル海賊盤チックなライブ盤だと思っている。
そんな記録用音源=『LIVE IN BERLIN』でもヤラレテしまうのだから,逆に「e.s.t.」の物凄さが際立っている。
三者三様,自由な音選びでありながら,このうちの一人でも欠けたら「e.s.t.」の音世界は絶対に存在しなくなる。3つの異なる個性が1つでも2でも,そして3つでも確実にフィットする信頼感とコンビネーションが根底にある。互いに互いの音を聴き,次の音選びを予想することができるのだろう。
ライブのハイライトとはハプニングである。曲が進行する過程で全く新しい曲へと変化していく。『LIVE IN BERLIN』がそのことを証明してくれている。
だからエスビョルン・スヴェンソンが亡くなった時,ダン・ベルグルンドとマグヌス・オストラムにとってメンバー・チェンジなど考えられなかったのだろう。
エスビョルン・スヴェンソン亡き今「e.s.t.」は完全終了である。『ヴァイアティカム+ライヴ』で「e.s.t.」は完全終了した。
『ヴァイアティカム+ライヴ』の真実とは「傷心のダン・ベルグルンドとマグヌス・オストラムに捧ぐ」なのだと思う。
Disc 1:Viaticum
01. Tide Of Trepidation
02. Eighty-eight Days In My Veins
03. The Well-wisher
04. The Unstable Table & The Infamous Fable
05. Viaticum
06. In The Tail Of Her Eye
07. Letter From The Leviathan
08. A Picture Of Doris Travelling With Boris
09. What Though The Way May Be Long
Disc 2:live in Berlin
01. A Picture Of Doris Travelling With Boris
02. In The Tail Of Her Eye
03. The Unstable Table & The Infamous Fable
04. The Rube Thing
05. All The Beauty She Left Behind
『VIATICUM』が素晴らしいのは言うまでもない。そんな大名盤に「e.s.t.」絶頂期のライブ盤がカップリングされたのだから,これ以上何を望めよう。
管理人は『ヴァイアティカム+ライヴ』リリースの意味とは「e.s.t.」のファン向けという以上に,エスビョルン・スヴェンソン亡き後,喪失感を覚えていたダン・ベルグルンドとマグヌス・オストラムを慰めるため,そして2人へ再始動を促すための企画ものだと思っている。
そんな企画ものの性質上『VIATICUM』については『ヴァイアティカム』批評を参照していただくとして,ここでは『LIVE IN BERLIN』批評についてのみ記すこととする。
『LIVE IN BERLIN』を聴いて,まず痛感したのは「e.s.t.」は3ピースのバンドだったという事実だ。
個人的に「e.s.t.」がバンド・サウンドを前面に押し出してきたのは『SEVEN DAYS OF FALLING』からだと思っているが『LIVE IN BERLIN』の壮絶なライブを聴き終えて,改めて「e.s.t.」が「3つの肉体,6本の腕,1つの頭脳」と称される理由を鑑みる気分がした
これは『LIVE IN BERLIN』が,キース・ジャレット・トリオと同じ,ピアノ・トリオのライブ盤だから余計に感じるのだろうが,個性の強い3人のせめぎ合いで芸術性をぐいぐいと高みに持っていこうとするキース・ジャレットに対し,エスビョルン・スヴェンソンは個人の個性以上にバンドとしての個性を追及している。
「e.s.t.」にあって他のピアノ・トリオに無いもの。それはそれぞれの曲に対し,バンドとしてどうプレイするか,それがメンバー間で合意形成できている点にある。
その“暗黙の了解”とか“阿吽の呼吸”が蜜だからこそ,アドリブの自由度が高い。毎回の演奏が予定調和で終わらない。いつでもリラックスと緊張感が程よく保たれているように聴こえる。
その意味で『LIVE IN BERLIN』は,普段と何ら変わらない「e.s.t.」の1回のライブの記録のように思う。
そう。『LIVE IN BERLIN』は,格段に素晴らしい決定的なライブではない。収録曲4曲,演奏時間も40分。どちらかと言えば単体でリリースしようにもできない「帯に短したすきに長し」的な音源集であって,オフィシャル海賊盤チックなライブ盤だと思っている。
そんな記録用音源=『LIVE IN BERLIN』でもヤラレテしまうのだから,逆に「e.s.t.」の物凄さが際立っている。
三者三様,自由な音選びでありながら,このうちの一人でも欠けたら「e.s.t.」の音世界は絶対に存在しなくなる。3つの異なる個性が1つでも2でも,そして3つでも確実にフィットする信頼感とコンビネーションが根底にある。互いに互いの音を聴き,次の音選びを予想することができるのだろう。
ライブのハイライトとはハプニングである。曲が進行する過程で全く新しい曲へと変化していく。『LIVE IN BERLIN』がそのことを証明してくれている。
だからエスビョルン・スヴェンソンが亡くなった時,ダン・ベルグルンドとマグヌス・オストラムにとってメンバー・チェンジなど考えられなかったのだろう。
エスビョルン・スヴェンソン亡き今「e.s.t.」は完全終了である。『ヴァイアティカム+ライヴ』で「e.s.t.」は完全終了した。
『ヴァイアティカム+ライヴ』の真実とは「傷心のダン・ベルグルンドとマグヌス・オストラムに捧ぐ」なのだと思う。
Disc 1:Viaticum
01. Tide Of Trepidation
02. Eighty-eight Days In My Veins
03. The Well-wisher
04. The Unstable Table & The Infamous Fable
05. Viaticum
06. In The Tail Of Her Eye
07. Letter From The Leviathan
08. A Picture Of Doris Travelling With Boris
09. What Though The Way May Be Long
Disc 2:live in Berlin
01. A Picture Of Doris Travelling With Boris
02. In The Tail Of Her Eye
03. The Unstable Table & The Infamous Fable
04. The Rube Thing
05. All The Beauty She Left Behind
(ビデオアーツ/ACT 2008年発売/VACG-1003/4)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/廣瀬大輔)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/廣瀬大輔)