
いや〜,デジタル・リズム・セクションと讃えられる世界指折りのリズム隊に即応し,尚且つ,いなしまくる佐藤允彦のオール・ラウンダーぶりが最高に素晴らしい!
超絶4ビートに超絶フリー・ジャズ。オーソドックスなスタンダードの甘いメロディーの合間に聴こえる,カチカチとキマりまくるスリリングなアドリブに大興奮!
佐藤允彦の図抜けた構成力,クリーンなピアノ・タッチとグラデーション,どんなリズムにも乗りこなせる幅の広さに唸ってしまう。
そうして特筆すべきはアドリブ・ラインの滑らかさ。1つのアイディアから次のアイディアへの淀みの無い流れの中で,浮かび上がる一発のフレージングにやられてしまう。スイングするピアノがとにかく分かりやすい。気持ち良い。
『ダブル・エクスポージャー』のピアニストは佐藤允彦でなければならなかった。佐藤允彦が奏でるピアノ・トリオのハーモニーは他に聴き覚えがない。
甘いメロディー・ラインを巧みに変化させていく佐藤允彦が,正に必要としたその場所にベースとドラムがピンポイントで鳴っている。
佐藤允彦が思い描く『ダブル・エクスポージャー』の世界観を完成させるには,名うてのデジタル・リズム・セクションが,つまりエディ・ゴメスとスティーヴ・ガットのリズム隊がどうしても必要とされていたのだ。
ただし,佐藤允彦がエディ・ゴメスとスティーヴ・ガットに求めていたのは佐藤允彦の意図を汲んだ演奏以上のものであった。
そう。佐藤允彦の意図を汲んだその上で,しっかりとエディ・ゴメスとスティーヴ・ガットの「自分の音」を聴かせることだった。

エディ・ゴメスのベースとスティーヴ・ガットのドラムの軽やかでデジタルな動きに重しを置き,終始,自分のペースでアドリブを決めまくる佐藤允彦の大名盤。
ちょっと聴き始めの印象はエレピの音色も手伝ってスピーディーで軽やかな展開。演奏が分かりやすい。しかし2週目以降,しっかりと耳を傾けると実に硬派で,押し倒されてしまう印象を持つ。所々の内角攻めには思わずのけぞってしまう。
そう。『ダブル・エクスポージャー』は,一発勝負のライブを支配した佐藤允彦の“作戦勝ち”な1枚であろう。
01. GO NO SEN
02. ALICE IN WONDERLAND
03. BAMBOO SHOOTS II
04. EVENING SNOW
05. PHODILUS BADIUS
06. FUMON
07. THUS THE SONG PASSED
08. NOUVELLE CUISINE
09. DUKE'S CALYPSO
10. ALL BLUES
11. ST. THOMAS
(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1988年発売/28・8H-5051)
(ライナーノーツ/油井正一,清水俊彦,原田充,佐藤允彦)
(ライナーノーツ/油井正一,清水俊彦,原田充,佐藤允彦)
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