HAUNTED HEART-1 ズバリ,エディ・ヒギンズの快進撃は全てこのアルバムから始まった。そしてエディ・ヒギンズ個人としての快進撃にとどまらず,VENUSというレーベル全体の快進撃は全てこの『HAUNTED HEART』(以下『魅せられし心』)から始まった。
 そう。『魅せられし心』は,言わばエディ・ヒギンズの“出世作”にしてVENUSの“象徴”なのである。
 
 具体的にはジャズスタンダード中心の選曲であり,ジャズの基本であるピアノ・トリオであり,適度にスイング,適度にメロディアスなミディアム〜スロー・テンポの演奏中心である。
 そしてジャケット良し。録音良し。初心者もとっつきやすい間口の広い演奏にしてマニアをも唸らせる「いぶし銀」な演奏と来れば,ジャズ・ファンの間で話題にならないはずがないし,売れないはずがない。

 エディ・ヒギンズを,そしてVENUSを悪く言うジャズ・ファンは本当のジャズ・ファンではない。
 そのような人たちは,ジャズとは4ビートである,ジャズとはアコースティックであるべき,と普段は声高に唱えているにも関わらず,口の根も乾かないうちに,ただオーソドックスすぎるという理由だけでエディ・ヒギンズをけなしている。やっかみである。

 本当のジャズ・ファンはオーソドックスな演奏スタイルの中に,その人の個性を聴き分けられる人たちである。
 『魅せられし心』の素晴らしさとは,全方向志向で派手さがないので上の下ぐらいに感じるから,リラックスして「オール5」に接することができる。『魅せられし心』を聴き込めば,必らずやジャズの何たるかが理解できる“叩き上げの”ファンへと成長できる点であろう。

HAUNTED HEART-2 リリカルで美しく知的でほんの少しセンチメンタル。悪態をつくことのない,いい感じのJAZZY。要するに優等生で万人向けのベタな1枚。崩さなくったって,いいものはいい。
 美メロの一番美しい部分が際立っている。老舗の名店的な“エディ・ヒギンズ特有の味”が沁み出ている。

 聴き馴染みのスタンダードのオンパレードなのに何回も繰り返し聴きたくなる。ベースドラムも自然に鳴らすエディ・ヒギンズの麗しい歌いっぷり! くぅ〜!

  01. My Funny Valentine
  02. Haunted Heart
  03. Stolen Moments/Israel
  04. Lush Life
  05. How My Heart Sings
  06. Someone To Watch Over Me
  07. I Should Care
  08. Lover Come Back To Me
  09. Isn't It Romantic?

(ヴィーナス/VENUS 1997年発売/VHCD-4051)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/寺島靖国)

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