
「ザ・スフィアーズ」のデビュー盤『LIVE IN OSAKA!!』(以下『ライヴ・イン大阪』)のどこを見渡しても山中千尋の文字はない。アルバム・ジャケットにも,いつもの美形の顔出しなし。
おいおい,ドル箱の山中千尋ブランドを隠してセールス的には大丈夫なのかぁ〜。
しか〜し『ライヴ・イン大阪』を聴けばすぐに分かる。「ザ・スフィアーズ」が発する山中千尋特有のジャズ・ピアノの香り。
これには原因があって,ちーたんのエレピがバランス的に飛び抜けているのは,ダナ・ロスのエレクトリック・ベース&カレン・テバーバーグのドラムが少々貧弱。
結果として,いつもの脇義典のウッド・ベース&ジョン・デイヴィスのドラムとの「山中千尋・トリオ」以上に「山中千尋・ワンマン・バンド」と化している。
つまり『ライヴ・イン大阪』は,山中千尋とその他2名によるライブ盤ゆえクオリティは二段落ちている。山中千尋のピアノにしても,せっかくの「ワンマン・バンド」なのだから,もっと自由に大暴れしても良いのに「ザ・スフィアーズ」全体のまとめ役に徹している感じがする。
「ザ・スフィアーズ」に不満に感じてしまう最大要因はダナ・ロスのエレクトリック・ベースである。せっかくのエレクトリック・ベースなのにリズム・キープがほとんどで,エレクトリック・ベースの代名詞=スラップなどは皆無。
要するに「ザ・スフィアーズ」は山中千尋の「アコベだけではなくエレベも使ってみました」的な実験作。エレベにエレピが乗っているにも関わらず,印象としてはアコベから何にも変化なし。

自他共に認めるちーたん・マニアの管理人をして駄盤の烙印を押してしまおう。
そう。「ザ・スフィアーズ=エレクトリック・ガールズ・バンド」の看板は偽りであって,聴き所はフェンダー・ローズではなくアコースティック・ピアノの方であった。
『ライヴ・イン大阪』は【八木節】の名演1曲に救われているよなぁ。【八木節】ばかりは山中千尋がニッコニコ〜!
01. RAIN, RAIN AND RAIN
02. LIVING TIME:EVENT V
03. YAGIBUSHI
04. BEMSHA SWING
05. HIMAWARI MUSUME
06. TAXI
07. THE ENTERTAINER
08. EVIDENCE
09. INSIGHT FORESIGHT
(ブルーノート/BLUE NOTE 2015年発売/UCCQ-1050)