LIVE IN NEMURO 1977-1 39年の時を越えてリリースされた『LIVE IN NEMURO 1977』(以下『ライヴ・イン根室 1977』)。
 このような過去音源のリリースは渡辺貞夫にとって初めてのことではなかろうか?

 この理由についてあらぬ憶測をしたものだが,要は渡辺貞夫の衰えから来たものではなく,渡辺貞夫の耳に初めて届けられた秘蔵音源が世に出た,という理由に胸を撫で下ろした( 事の詳細は大川正義氏が執筆したライナーノーツを参照のこと )。

 つまり渡辺貞夫のファンにとって『ライヴ・イン根室 1977』とは,単なる過去音源の発掘として片づけるのではなく,本気で渡辺貞夫の最新作として聴くべきアルバムであり,聴き込めば聴き込むほどにいいアルバムである。

 『ライヴ・イン根室 1977』が,公式録音でなかったという事実は,則ち,毎夜『ライヴ・イン根室 1977』クラスの名ライブが,日常的に演奏されていた証拠である。

 『ライヴ・イン根室 1977』の録音時期は,ちょうど渡辺貞夫が世界に登り詰める途上に当たる。
 『ライヴ・イン根室 1977』の半年前が『MY DEAR LIFE』で2週間後が『AUTUMN BLOW』。ナベサダフュージョンの間と間に行なわれた本格的なジャズライブというスタンスである。

 そう。『ライヴ・イン根室 1977』の真実とは,渡辺貞夫ジャズジャズ・ロック→フュージョンへの過渡期特有の魅力が1枚に詰め込められている。ライブだから,いつも以上に自由にアイディアを試している。

 渡辺貞夫の頭にあったアイディアの中には,アフリカがありボサノヴァがある。そしてアメリカの流行に影響を受けたクロスオーヴァーなジャズがある。

 実はナベサダさん。翌年の『CALIFORNIA SHOWER』の大ヒット以降は,アルバム制作は有名海外ジャズメンとの共演一色。その意味でも日本人で構成されたレギュラー・バンドの良さを堪能できる『ライヴ・イン根室 1977』のクロニカル的な価値は高い。
 
LIVE IN NEMURO 1977-2 とは言え『ライヴ・イン根室 1977』のハイライトは【ON GREEN DOLPHIN STREET】と【RHYTHMANING】のストレートなジャズ・ナンバー。

 オール日本人による渡辺貞夫グループがスピード豊かに疾走している。福村博トロンボーン本田竹広ピアノエレピ岡田勉ベース守新治ドラムのレギュラー・クインテットが一体化して押し寄せてくる。ハーモニーを重ねて楽しむスピリットみたいなものが伝わってくる。

 最高にグルーヴする渡辺貞夫のレギュラー・グループが色褪せていない。逆になんだかこれって新しい!? 『ライヴ・イン根室 1977』は渡辺貞夫・ファンにとっての「温故知新」なのである。

  01. MASSAI TALK
  02. HUNTING WORLD
  03. CHELSEA BRIDGE
  04. ON GREEN DOLPHIN STREET
  05. BOSSA NA PRAIA
  06. RHYTHMANING
  07. MY DEAR LIFE

(JVC/JVC 2016年発売/VICJ-61751)
(ライナーノーツ/小川隆夫,大川正義)

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