
今回は17年前のライブ音源である。『SADAO PLAYS BACH』(以下『プレイズ・バッハ』)である。
管理人はジャズ/フュージョン専門であるが,MJQを筆頭にジャズメンが取り上げる題材としてのクラシックに接する機会は幾らかある。
ゆえに『プレイズ・バッハ』も購入したのだが,その理由は“しょうがなく”ではなく“喜んで”である。
管理人は渡辺貞夫が大好きだ。特に渡辺貞夫のアルトの音色は「世界一美しい」と太鼓判を押す。そんな管理人としては『プレイズ・バッハ』こそが待望の過去音源に違いない。
期待高まる〜! 聴く前からこんなにワクワクするのは何年振りのことだろう。
『プレイズ・バッハ』を無心で聴く。流れ出る音楽は「クラシックのバッハそのもの」である。しかし,それ以上に聴こえてくるのは,あの渡辺貞夫の「世界一美しい」アルトの音色である。
やはり曲とか題材とかは二の次である。ただ渡辺貞夫のアルト・サックスが鳴っている。それだけで大満足してしまう自分がいる。
しかし,繰り返し聴いているうちに『プレイズ・バッハ』の印象が変化した。やっぱり面白くはない。ナベサダが緊張でかしこまったクラシックのコンサート録音を聴いている気分がしてしまう。
『プレイズ・バッハ』は渡辺貞夫のアルト・サックスの音色目的で聴くには最高の1枚であろう。だが完成されたコンサートからはナベサダの香りは届いてこない。

『プレイズ・バッハ』は,良く出来たライブ演奏と認めるが,いかんせんライブなのに非ジャズ的な書き譜通りの演奏に終始している。これはこれで有りなのか無しなのか?
仮に渡辺貞夫が「クラシックのバッハ」ではなく,最近流行りの「バッハ・ジャズ」のアレンジに向き合ったとしても,独唱によるアルトの音色の美しさは損なわれなかったように思えるのだが…。
まっ,あのナベサダが「バッハ・ジャズ」とは下品すぎて手を出さないのだろうけど…。
01. FLUTE SONATA IN E MAJOR BWV.1035
02. FLUTE SONATA IN E FLAT MAJOR BWV.1031
03. PARTITA FOR FLUTE SOLO IN A MINOR BWV.1013
04. ORCHESTRAL SUITE NO.2 IN B MINOR BWV.1067
05. POR TODA A MINHA VIDA
06. CARINHOSO
07. FLUTE SONATA IN C MAJOR BWV.1033
08. FLUTE SONATA IN B MINOR BWV.1030
(ビクター/JVC 2017年発売/VICJ-61768)
(ライナーノーツ/菅原正二,小林道夫)
(ライナーノーツ/菅原正二,小林道夫)