THE FIRST MILESTONE-1 エリック・アレキサンダーが特に素晴らしいのは,エリック・アレキサンダーと同じくジョン・コルトレーンを信奉しているテナーサックスの大物,マイケル・ブレッカーブランフォード・マルサリスの影響をものともしない,自分の信じる「テナー・タイタン」の姿を追いかけているところである。

 つまり,超テクニカルで「シーツ・オブ・サウンド」の現代版を行くマイケル・ブレッカーとも,シリアスなジャズにしてオープンな雑食系であるブランフォード・マルサリスとも違う。
 シカゴというオールド・ジャズの伝統を重んじる閉鎖的なコミュニティで育った“らしさ”を強く感じる。

 直情的でありながら情緒的ブレを起こさない平衡感覚。ロング・トーンによるソロを吹き続けようとも,一瞬たりとも決してバテない精神的なたくましさ。ひたむきにハード・ブローイング一辺倒で,どんな局面でも吹き抜ける“豪快な力業”に,エリック・アレキサンダーの揺るぎない意志を感じてしまう。

 『THE FIRST MILESTONE』(以下『ザ・ファースト・マイルストーン』)は,エリック・アレキサンダーのリーダー作であるが,実はこのアルバム,エリック・アレキサンダーの男気を感じたピアノハロルド・メイバーンギターパット・マルティーノによる,エリック・アレキサンダーの「プッシュ・アルバム」だと思っている。

 『ザ・ファースト・マイルストーン』を初めて聴いた時,エリック・アレキサンダーが“御大2人”にプロデュースされている印象を受けた。
 そう。初めて「吹きすぎない」エリック・アレキサンダーの新境地を聴かせてもらった。パット・マルティーノから教えを請いたエリック・アレキサンダーが抑制美に目覚めている。

 パット・マルティーノ参加の『ザ・ファースト・マイルストーン』に続く,ジム・ロトンディ参加の『セカンド・マイルストーン』,ニコラス・ペイトン参加の『サミット・ミーティング』,ロン・カーター参加の『ナイト・ライフ・イン・トーキョー』の「マイルストーン四部作」は,自重することを覚えた“大人のNEWエリック・アレキサンダー”のテナーサックスが聴き所である。

THE FIRST MILESTONE-2 パット・マルティーノのイマジネイティヴなギター・ユニゾンからこぼれ出すエリック・アレキサンダーの豊かなテナーがメロディック。
 これまでも師匠としてエリック・アレキサンダーをバックから煽り続けて鍛えてきたハロルド・メイバーンパット・マルティーノを迎えてパワー・アップ。ピアノのニュアンスを聞き取ろうとするエリック・アレキサンダーを置いてけぼりに前へ前へと乗り出している。

 そう。ピアノハロルド・メイバーンギターパット・マルティーノによる,バッパー畑の至極のしごきが,エリック・アレキサンダーテナーサックスに“アダルトな響き”を付与している。

  01. STAND PAT
  02. #34 WAS SWEETNESS (FOR WALTER PAYTON)
  03. THE FIRST MILESTONE
  04. THE TOWERING INFERINO
  05. NIGHT SONG
  06. LAST NIGHT WHEN WE WERE YOUNG
  07. THE PHINEAS TRANE
  08. I'M GLAD THERE IS YOU

(マイルストーン/MILESTONE 2000年発売/VICJ-60555)
(ライナーノーツ/成田正)

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