
エリック・アレキサンダーの出来は最高である。しかし悔しいかな,それ以上にロン・カーターの音楽の拍動が聴こえてくる。
『ナイトライフ・イン・トーキョー』でのエリック・アレキサンダー・カルテットのメンバーは,ベースこそ「初顔の」ロン・カーターであるが,ピアノがハロルド・メイバーンでドラムがジョー・ファンズワースのいつも通りのメンバーである。
しかし『ナイトライフ・イン・トーキョー』でのエリック・アレキサンダー・カルテットがいつもとは違う。特にハロルド・メイバーンのピアノがリズム・セクションしており,伴奏に徹しているかのようで大人しい。
一方でジョー・ファンズワースのドラムが「水を得た魚」改め「ロン・カーターを得たジョー・ファンズワース」である。
そう。エリック・アレキサンダー・カルテットのサウンドの変化こそが「ミスター・ベース」ロン・カーターの功績である。
いつもは「コルトレーン派」のエリック・アレキサンダーにふさわしく,マッコイ・タイナーばりに弾きすぎてプッシュしまくるハロルド・メイバーンが,ロン・カーターに頭を抑えつけられたがため,相対的にジョー・ファンズワースのドラミングが前に出た。
その結果,ドラムに負けることなど許せない「男気」テナーマン=エリック・アレキサンダーが,いつも以上に前に出るのだが,エリック・アレキサンダーが前に出れば前に出るほど,バックでサウンドメイクしているロン・カーターのベース・ラインがギンギンに目立つ構図。
ロン・カーターに「遠慮した?」ハロルド・メイバーンが,一介のピアニスト然と,幅の広いプレイを披露している。ゆえに全体の音場が広がっている。
エリック・アレキサンダーのテナー・サックスが益々豪快にブローしている。しかし『ナイトライフ・イン・トーキョー』では,ロン・カーターと共鳴する部分が多く,則ち音楽的なブローであり,ハーモニーが美しい。
これまでハード・バップ一辺倒だったエリック・アレキサンダーにソニー・ロリンズのような“歌”を初めて感じた。自己表現の手段としてではなく聴き手の心を動かすためのブローがある。

管理人の結論。『ナイトライフ・イン・トーキョー』批評。
『ナイトライフ・イン・トーキョー』の真実とは「RON CARTER TRIO FEATURING ERIC ALEXANDER」で間違いない。
“ジャズ・ジャイアント”ロン・カーターの音楽の拍動を受けて,ついにエリック・アレキサンダーが「アレキサンダー大王」となった!
01. NEMESIS
02. I CAN DREAM, CAN'T I?
03. NIGHTLIFE IN TOKYO
04. I'LL BE AROUND
05. COLD SMOKE
06. ISLAND
07. BIG R.C.
08. LOCK UP AND BOW OUT
(マイルストーン/MILESTONE 2003年発売/VICJ-61119)
(ライナーノーツ/テッド・パンケン)
(ライナーノーツ/テッド・パンケン)
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