
エスビョルン・スヴェンソンの残念な事故死から10年。この10年間で「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」を取り巻く環境は大きく変化した。ポスト・ロックの旗手であり「ジャズを演奏するポップ・バンド」としての評価が上がったのだ。
エスビョルン・スヴェンソンの死と入れ替わるように登場してきたロバート・グラスパーやゴー・ゴー・ペンギンのピアノにエスビョルン・スヴェンソンの影響が感じられる。
いいや,巷は「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の起こした革新的な音楽スタイルで溢れている。もはや「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」は,現代の音楽シーンのバックグラウンドなのだと言い切ってしまおう。
だ・か・ら『E.S.T. LIVE IN LONDON』(以下『ライヴ・イン・ロンドン』)を初めて聴いた時,特段の衝撃を感じなかった。「何だかいつも通りだなぁ」と思ってしまった。こんな感想「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」では初めてのことだった。
そう。この「並みのアルバム」「普通のライブ」と聴こえてしまう感想こそが「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」がありふれてしまった証拠なのである。
だ・か・ら『ライヴ・イン・ロンドン』は2週目からが本当に来る。『ライヴ・イン・ロンドン』は「並みのアルバム」「普通のライブ」ではなかった。
巷に溢れるエスビョルン・スヴェンソンっぽいピアノはエスビョルン・スヴェンソンのピアノではなかった。
エスビョルン・スヴェンソンのピアノには,ダン・ベルグルンドのベースとマグヌス・オストラムのドラムが必要なのだ。もの凄いリズム!
10年振りの新作『ライヴ・イン・ロンドン』を聴いたことで「『e.s.t.』はジャズ・バンドではなく,ジャズも演奏するポップ・バンド」の明言を10年の時をかけて再認識させられてしまったように感じる。

『VIATICUM』の楽曲も『STRANGE PLACE FOR SNOW』の楽曲も『ライヴ・イン・ロンドン』で成長している。
『ライヴ・イン・ロンドン』は『VIATICUM』と『STRANGE PLACE FOR SNOW』の2枚組ライブ盤ではない。
10年遅れでやってきた「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」の新作である。現在もエスビョルン・スヴェンソンのピアノ・トリオの拍動と鼓動が聴こえてくる。
そう。エスビョルン・スヴェンソンのジャズ・ピアノの音楽は「リアル」である。エスビョルン・スヴェンソンは今だ生き続けている!
CD 1
01. Tide Of Trepidation
02. Eighty-eight Days In My Veins
03. Viaticum
04. Mingle In The Mincing-Machine
05. In The Tail Of Her Eye
06. The Unstable Table & The Infamous Fable
CD 2
01. When God Created The Coffeebreak
02. Behind The Yashmak
03. Believe, Beleft, Below
04. Spunky Sprawl
(キングインターナショナル/ACT 2018年発売/KKE-080)
(CD2枚組)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/オラシオ)
(CD2枚組)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/オラシオ)