UTOPIA-1 山中千尋ジャズ・クラシック・アルバムの第2弾が『UTOPIA』(以下『ユートピア』)。
 前回の『モルト・カンタービレ』が大好評。個人的にも『モルト・カンタービレ』の続編を期待していたので,今度は更に過激なアレンジで攻めてくるかと思いきや『ユートピア』には5年前に体感した“衝撃”があまり感じられなかった。

 勿論『ユートピア』もいい演奏ばかりである。特にモータウンな5拍子のビートがノリノリの【白鳥】には心底ヤラレテしまった。凄い&凄い。こんな【白鳥】を聴けるのは,世界中で山中千尋だけ!

 クラシックをカヴァーしたジャズ・アルバムと来ると,ジャズの特長であるリズムを変えるのがセオリー。『ユートピア』も山中千尋得意の「変拍子」の多投でガラッと印象を変えている。
 激変したリズムに耳も慣れ,いざメロディーに注意を向けていくと,ほぼオーソドックス。ここが何とももどかしい。山中千尋の個性であろう“遊び”の部分が薄いのだ。

UTOPIA-2 山中千尋の本気度を評価できるのは,曲の途中でピアノソロキーボードソロへの攻めた展開にある。ピアノキーボードによる語法の違いやズラシはあるが,1つの同じ世界なのに別々の世界が同居している感じがちーたんらしいのだ。

 弾き始めは有名クラシックを演奏しているつもりだろうが,やっぱり山中千尋は自身のオリジナル気分なんだよなぁ。そう感じるくらいにピアノキーボードを弾き倒している。
 これはアドリブではないよなぁ。全てが事前のアレンジであって計算されている。ここまでクラシックの所謂スタンダードを骨格の部分と上物の部分に分解し,壊してはならない柱には触らず,いじれる部分だけをいじり倒している。この「線引きの才能」が本当に素晴らしいと思う。

 一聴すると奇想天外なアレンジなのだが,何回も聴き込んでいくうちに実は緻密にアレンジされていることが伝わってくる。『ユートピア』はそんなアルバムだと思う。
 その視点で聴き返すと『モルト・カンタービレ』にも,クラシック出身の山中千尋ならではの教養の深さに説得されたことが分かるのだった。

UTOPIA-3 管理人の結論。『ユートピア批評

 『ユートピア』はクラシックも聞くジャズ・ファン向き,あるいはジャズも聞くクラシック・ファン向きであって,山中千尋ファンとしては,想定の範囲内での「なんでこうなるのっ」!的なアルバムである。

 …って『ユートピア批評も『モルト・カンタービレ批評の続編になっちゃいました。すみません。
 もっとちーたんのような深い解釈ができると良かったのですが『ユートピア』には正直,入れ込みが足りません。

PS 「UTOPIA-3」は販促用のクリアファイルです。

   CD
  01. Utopia
  02. La Piere D'une Vierge
  03. Mambo -from West Side Story-
  04. Rhapsody In Blue〜Strike Up The Band
  05. Le Cygne
  06. Piano Sonata No.4
  07. Orchestral Suite No.2 -Badinerie〜Ricochet
  08. Arpeggione Sonata
  09. I Loves You, Porgy
  10. Shinda Otokono Nokoshita Monowa〜Hope For Tomorrow
  11. Hungarian Dance No.5
  12. Songs My Mother Taught Me

   DVD
  01. La Piere D'une Vierge
  02. Rhapsody In Blue〜Strike Up The Band
  03. I Loves You, Porgy

(ブルーノート/BLUE NOTE 2018年発売/UCCJ-9215)
★【初回限定盤】 UHQCD+DVD

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