
そんなフルート奏者のエリック・ドルフィー,バス・クラリネット奏者のエリック・ドルフィーの強烈なイメージ形成は『ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT,VOL.2』(以下『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』)によるところが大きい。
『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』でのエリック・ドルフィーは本職のアルト・サックスを吹いていない。
【アグレッション】ではバス・クラリネットを吹き【ライク・サム・イン・ラヴ】ではフルートを吹いている。このアルト・サックスからの持ち替えで名盤を作ったエリック・ドルフィーの凄さが伝わるだろうか?
エリック・ドルフィーの吹くフルートとバス・クラリネットがまぁ凄い。怪物の登場のようである。ドスンと重いフレージングが軽やかに流れ続ける。何度聴き返しても本職のフルート奏者,バス・クラリネット奏者以上の演奏力に驚愕してしまう。
いいや,やっぱり聴き返すと,フルートとバス・クラリネットの細かな表現力はそれほどでもない。ただし,エリック・ドルフィーの伝える力,発信しているメッセージがメガトン級に重いのだ。
どうしても耳から頭から離れないエリック・ドルフィーの驚異のフレージング。管理人はエリック・ドルフィーの吹くフルートとバス・クラリネットの奇抜なフレージングがどうやっても忘れられない。
【アグレッション】の何分何秒とか【ライク・サム・イン・ラヴ】の何分何秒と言うわけではない。『アット・ザ・ファイブ・スポット VOL.2』はイメージとしてミニマル・ミュージックっぽいのだ。
そう。エリック・ドルフィーは1曲1曲を大きなキャンバスに見立てて,そこへ木管楽器を筆として画を描いていくような芸術家に思う。エリック・ドルフィーの筆遣いは早い。瞬間的なタンギングが斬れ斬れで,サッササッサと筆を運んでいく。
でも出来上がりを見てみれば,完璧な1枚の画が書き上げられている。右と左。上と下。前と後ろが非対称のようで調和しているのだった。常人には決してできない芸当であろう。

『アット・ザ・ファイブ・スポットVOL.2』のエリック・ドルフィーの魅力は,持ち替えのエリック・ドルフィーである。
つまりアルト・サックス奏者としては見せることのできなかった別の一面が解き放たれている。そしてそれこそが実は本当のエリック・ドルフィーなのではないか?と思わせるくらいに重く軽く強烈。決して脳裏から離れることのない衝撃波を放っている。
エリック・ドルフィーはアルト・サックス奏者である。しかし,エリック・ドルフィーという名前を聞いて鮮明に思い浮かべてしまうのはフルート奏者のエリック・ドルフィーの方であり,バス・クラリネット奏者のエリック・ドルフィーの方なのである。
01. AGGRESSION
02. LIKE SOMEONE IN LOVE
(プレスティッジ/PRESTIGE 1961年発売/VICJ-23512)
(ライナーノーツ/ロバート・レヴィン,悠雅彦)
(ライナーノーツ/ロバート・レヴィン,悠雅彦)