OUT TO LUNCH-1 エリック・ドルフィー唯一のブルーノート盤『OUT TO LUNCH』(以下『アウト・トゥ・ランチ』)を世評とは異なり管理人は評価していない。

 こう書くと駄盤だと思われるといけない。『アウト・トゥ・ランチ』の演奏は素晴らしいし,リハーサルをこなしたセクステット編成が細部までが練り上げられている。ブルーノートらしい音だと思う。
 しかし,そのカチッとした構成ゆえに音楽のレベルが高いのを認めるとしても,聴いて楽しいとは思えない。だから好きとは公言できない。

 管理人はエリック・ドルフィーはメロディーの人ではなくアドリブの人だと思っている。『アウト・トゥ・ランチ』のアドリブはそれほどではない。アドリブなら『アット・ザ・ファイブ・スポット』を聴くべきだろう。

 要するに『アウト・トゥ・ランチ』は,美味しいところがなくなった芸術作品であり,エリック・ドルフィーが「こじんまりとまとまっている」。アブノーマルな「お行儀の良さ」が鼻につく。
 そのせいか『アウト・トゥ・ランチ』でのエリック・ドルフィーって,結構,理知的なアドリブを吹いている。単なる激情の人ではなかったのだ。

 ゆえに『アウト・トゥ・ランチ』でのエリック・ドルフィーの演奏は新主流派のクインテットに迎えられた客演のようだ。サイドメン的な異色のアルトサックスが一音鳴れば,新主流派が“ひっくり返る”感じがする。

 暴言を吐けば『アウト・トゥ・ランチ』の音楽性の主役はボビー・ハッチャーソンの硬質で幾何学的なヴァイブであろう。ボビー・ハッチャーソン「世紀の大名演」の1枚として推薦したい。

OUT TO LUNCH-2 管理人の結論。『アウト・トゥ・ランチ批評

 『アウト・トゥ・ランチ』は,アウトローのエリック・ドルフィー最大の優良盤が裏目のアウトロー。
 まったく隙のない内容なのに,メロディーどころかハーモニー,リズムに至るまでその全てがことごとくアウトしまくりで,聴いてるこっちが吐きそうになるくらいのアブストラクト感。

 フリージャズ〜新主流派の名手たちが,こぞってエリック・ドルフィーの特異な音を共鳴させている。なんだか嗚咽が聴こえてくる気分になる。

  01. HAT AND BEARD
  02. SOMETHING SWEET, SOMETHING TENDER
  03. GAZZELLONI
  04. OUT TO LUNCH
  05. STRAIGHT UP AND DOWN

(ブルーノート/BLUE NOTE 1964年発売/UCCQ-9228)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/A.B.スペルマン,原田和典)

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