
というのも,いつでもどこでもエンターテイナーしてしまうオスカー・ピーターソンに対して,エロール・ガーナーは劇場に立ってからが凄い! 最初の一音から最後の一音まで,観客を楽しませるためならどんなに過剰なサービスだってどんとこいの大盛り上がり大会! ノッタ時のエロール・ガーナーには手が付けられない!
そんなエロール・ガーナーの,そしてジャズ・ピアノの歴史に残る決定的な名盤が『CONCERT BY THE SEA』(以下『コンサート・バイ・ザ・シー』)である。
とにもかくにも『コンサート・バイ・ザ・シー』を聴いていると,その日の嫌なことは一遍に消えてしまう。いつの間にか「A HAPPY DAY!」(by UES)気分に浸ってしまう。「憂鬱を吹き飛ばす万能薬」な1枚だと思う。
『コンサート・バイ・ザ・シー』の隙の無さは,エロール・ガーナーの名手ぶりを物語っている。エロール・ガーナーは“ピアノを歌わせる”名手である。
退屈することなど一瞬もない。耳が釘付けとはこのことだ。本当にいい演奏を聴いた,という満足感が幸福感につながっていく…。
音源が古いし,陰りもない。ピアノ以外に聴こえるのは聴衆の反応だけであって,ほぼベースとドラムは聴こえない。エロール・ガーナーの代表曲【MISTY】も入っていない。
これらが解決されていれば超名盤の仲間入りも出来たであろうに…。

マイナス要因など1つもない。『コンサート・バイ・ザ・シー』には,ジャズを聴く楽しみの全てが詰まっていると思う。
観客全員をあっと言う間に「ワン・アンド・オンリー」の世界へと引きずり込む“芸達者”エロール・ガーナーの真骨頂! もはや「お手上げ」状態である。
『コンサート・バイ・ザ・シー』の東映映画のロゴが似合いそうな荒波と岩場のアルバム・ジャケット。浮かれた女性が両手を広げて「お手上げ」ポージングは音楽の内容を表現しているのです!
01. I'LL REMEMBER APRIL
02. TEACH ME TONIGHT
03. MAMBO CARMEL
04. AUTUMN LEAVES
05. IT'S ALL RIGHT WITH ME
06. RED TOP
07. APRIL IN PARIS
08. THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME
09. HOW COULD YOU DO A THING LIKE THAT TO ME
10. WHERE OR WHEN
11. ERROLL'S THEME
(CBSソニー/CBS/SONY 1955年発売/32DP 660)
(ライナーノーツ/粟村政昭)
(ライナーノーツ/粟村政昭)