THE WINDMILLS OF YOUR MIND-1 『THE WINDMILLS OF YOUR MIND』(以下『風のささやき』)は“アート・ファーマー目当て”で購入した。期待通りの名演であった。
 しかし管理人が気に入ったのはアート・ファーマー以上にヨーロピアン・ジャズ・トリオの方である。

 アート・ファーマーは相変わらずいい。未だ健在のバリバリであり,バリバリの「叙情派」である。しかしそれだけではないのだ。この音世界はヨーロピアン・ジャズ・トリオの「叙情派」なのだ。

 『風のささやき』におけるヨーロピアン・ジャズ・トリオの立ち位置とはアート・ファーマーのバックを固めた「伴奏型」ピアノ・トリオのそれではない。では自らが前面に出ているかと言えばそういう訳でもない。

 『風のささやき』とは,アート・ファーマーを聴くとか,ヨーロピアン・ジャズ・トリオを聴くとか,どちらかに偏って聴くアルバムではない。
 『風のささやき』の真実とは,ヨーロピアン・ジャズ・トリオではなくヨーロピアン・ジャズ・カルテットジャズ・ピアノなのである。

 トランペットアート・ファーマーピアノマーク・ヴァン・ローンベースフランス・ホーヴァンドラムロイ・ダッカスによる「4人で1つのヨーロピアン・ジャズ・カルテット」だから,バリバリの「叙情派」を演奏できるのだ。

 『風のささやき』を聴くまでは,初代ピアニストであるカレル・ボエリーこそがヨーロピアン・ジャズ・トリオのイメージであった。
 アクセントをつけながら,走ったり止まったり流れたり…。それでいてヨーロッパの素養をバックボーンに弾きこなす…。

 カレル・ボエリーというピアニストには,生粋のアメリカ人には逆立ちしても到底表現出来ない芸当のジャズ・ピアニストのイメージを抱いている。

THE WINDMILLS OF YOUR MIND-2 一方のマーク・ヴァン・ローンピアノであるが,溢れ出る「ノーブルさ」と言うか,大陸の歴史を感じさせる「悠久さ」と言うか,そのような雰囲気である。
 だから,もはやアメリカ人ではなくヨーロッパ人として生きている?アート・ファーマーとの相乗効果を発揮している。

 アート・ファーマーの特長とヨーロピアン・ジャズ・トリオの特徴の両面を楽しめる。毒素の抜けた演奏である。初代ピアニストカレル・ボエリーではここまで上手くはいかなかったかもしれない。

 ヨーロピアン・ジャズ・カルテットの二代目ピアニストマーク・ヴァン・ローンジャズ・ピアノが“粋”だよねぇ。

  01. THE WINDMILLS OF YOUR MIND
  02. SURREY WITH THE FRINGE ON TOP
  03. BOY ON A DOLPHIN
  04. LULLABY OF THE LEAVES
  05. NOCTURNE #2
  06. THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES
  07. SNOW ANGELS
  08. IN THE STILL OF THE NIGHT
  09. WHEN I FALL IN LOVE
  10. A MINOR VAMP
  11. GREEN LEAVES OF SUMMER

(ベイブリッジ/BAYBRIDGE RECORDS 1997年発売/TECW-25629)
(ライナーノーツ/吉村浩二)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)