
そのフォープレイからリー・リトナーが脱退することになった。ボブ・ジェームスの頭の中には,リー・リトナーの代わりが見つからなければフォープレイの解散も選択肢としてあったことだろう。
なぜならフォープレイの“売り”とは「超大物4人組」。リー・リトナーの代わりは「そこそこレベルの大物」では務まらない。果たして,リー・リトナー・クラスの「超大物」で,2年に1枚のレコーディングに参加できるギタリストが見つかるのかどうか?
当のリー・リトナーも心配する中,フォープレイの新ギタリストが発表された。発表された後ならば「この人しかいない!」となるのだが,それにしても「まさかのまさか!」な結果である。
何と!リー・リトナーの後釜ギタリストとはリー・リトナーの「公式ライバル」であるラリー・カールトン“その人”! 名脚本家でも絶対に思いつかない?「夢」のようで「奇跡」のような人選だと思う。
ラリー・カールトンよ,よくぞ決心してくれた。『4』の最高の出来映えを聴き返すにつれ,ラリー・カールトンへの思いが強くなる。ラリー・カールトンが完璧にリー・リトナーの後釜を務め上げている。
元々スタジオ・ミュージシャンであったリー・リトナーとラリー・カールトンだから実現した「スムーズすぎるメンバー・チェンジ」。ただし,リー・リトナーとラリー・カールトンでは大いに個性が異なることをリスナーは認識しておくべきだろう。
そう。『4』の最高の出来映えはラリー・カールトンの最高の仕事に1つとして記憶されるべきだと思う。
リー・リトナーにしても,フォープレイの中でギターを弾くには「没個性」が求められていたのだが,ラリー・カールトンの場合は,フォープレイの中で自分を捨てる,尚且つ,リー・リトナーが創り上げてきたサウンド・カラーに寄せるため,もう一段階自分を捨て去る「没没個性」が求められている。
ゆえに『4』でのラリー・カールトンのギターが大人しい。いいや,完璧に「影武者ミッション」を遂行することが“仕事人”ラリー・カールトンなりの自己主張なのだと思う。
そんなラリー・カールトンの“男気”に,ボブ・ジェームス,ネイサン・イースト,ハービー・メイソンの3人が応えないはずがない。
一歩下がろうとするラリー・カールトンを「前へ前へ」と意識的にプッシュしている。『4』でフォープレイが“世界最高のアンサンブル・バンド”になったと思う。

“明るく爽やかな”リー・リトナーのもと発展してきたバンド・スタイルから“ブルージーで粘り気のある”ラリー・カールトンのもと「自分を活かして他の人も活かす」バンド・スタイルへと進歩を遂げた『4』。
カールトン期のフォープレイはソロ・パートでのアドリブがリトナー期のフォープレイより熱くなったと思う。
それにしても【STILL THE ONE】は名曲中の名曲である。フォープレイ存続の危機を救ってくれたラリー・カールトンに捧げるハービー・メイソンからの「ラブ・ソング」だと悦に入って聴いている。
【STILL THE ONE】1曲の魅力で“気だるさの”ラリー・カールトンを大歓迎している,リー・リトナー派の自分が確かにここにいる。
それにしてもリトナー期の最高の1曲が1曲目の【BALI RUN】で,カールトン期の最高の1曲が1曲目の【STILL THE ONE】というのも単なる偶然を超えた「永遠のライバル」のインパクト!
01. Still The One
02. Little Foxes
03. Sexual Healing
04. Charmed, I'm Sure
05. Someone To Love
06. Rio Rush
07. Piece Of My Heart
08. Slow Slide
09. Vest Pocket
10. Swamp Jazz
11. Out Of Body
(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1998年発売/WPCR-1942)
(ライナーノーツ/工藤由美)
(ライナーノーツ/工藤由美)
コメント一覧 (2)
このアルバムは結構気に入ってて時々聴いています。
ブログの内容も興味深く、アルバムの背景などの話はまだ疎くて最初は分からなかったのですが、読んでいくうちにだんだん分かるようになってきています。
どの曲も好きですが、個人的には 09 Vest Pocket という曲がこのアルバムの中では一番好きです。
セラビーさんも記事にされています 01 Still The Oneもとてもいい曲だと思います。
fourplayのアルバムは過去から新しいものまで聴いてきましたが、好きなアルバムの一つです。
『4』。Atsushiさんもお気に入りのようでうれしいです。ラリー・カールトンのブルージーがまだ控え目でして,ボブ・ジェームスとラリー・カールトンの相性はこの時期が最高だと思います。
私は『4』以降のアルバムに『4』の亡霊を求めてフォープレイを聴くようになりました。結果として二匹目は出ませんでしたが『4』を知っているからこそ,他のラリー・カールトンも受け入れることができたので『4』の功績は大きいです。
【Vest Pocket】も名曲ですね。というかフォープレイは全曲いいです。演奏自体が悪いはずがありません。フォープレイのレベルまでいくと好みの問題ですので〜。