YES, PLEASE!-1 『YES,PLEASE!』(以下『イエス・プリーズ』)を初めて聴き終えた時,万感の思いに襲われた。ついにフォープレイデビュー以来,ずっと追及してきた理想のサウンドに到達したように思えた。

 『イエス・プリーズ』は,ボブ・ジェームスにとって記念碑的な1枚になるのだろう。ついにボブ・ジェームスの念願叶ったりである。
 キーボードボブ・ジェームスと活動を共にしてきた,ベースネイサン・イーストドラムハービー・メイソンは勿論,リー・リトナーの後を受けたラリー・カールトンにしても「やるべきことをやりきった」満足感に浸ったように思う。
 特に神曲【FREE RANGE】が最高すぎる。4人の会話を盗み聞きしているような気分でアガル〜。

 まっ,これから「褒め殺し」の苦言を書くのだが,つまり『イエス・プリーズ』はフォープレイというバンド・サウンドの「リビジョンアップ版」としか聴き所はない。
 大枠は「調和」という不変のテーマであって,細かな修正に修正を重ねて,もはや手を加える箇所はない感じ? 「どうぞ美味しく召し上がれ」とボブ・ジェームスにケーキを差し出された感じ?

 もう一つ『イエス・プリーズ』に「完成版」のイメージを持ってしまったのは,ジャケット写真から連想するVENUSレコードのあれである。美女がカメラ目線で前かがみのあれが…。
 つまりは「メロウな売れ線&ロマンティック」→『イエス・プリーズ』をイメージしてしまった。あながち当たっていると思っている。

 この路線の選択は間違いではなかった。恐らくフォープレイの出発点は間違ってはいなかった。穏やかで軽めのリズムに大人のエロティシズムを感じるあのノリ…。上手にパート分けされたソロとアンサンブル…。インストとヴォーカルの組み合わせのハイセンス…。4人のバランスが生む極上のアプローチ…。

 ただし『イエス・プリーズ』を聴いているとフォープレイのアンサンブル・フォーマットの限界が見えてくる。フォープレイの4人はもっと自由に演奏できるはずである。
 なのに『イエス・プリーズ』の演奏は譜面通りのような感じで,自分で決めたルールに自らが縛られて?(自分で自分の首を絞めて?)窮屈そうに感じられる。

YES, PLEASE!-2 だから『イエス・プリーズ』を素晴らしいアルバムとして誰かに推薦することはあるとしても,管理人の趣味には合わない。
 ラリー・カールトンを素晴らしいギタリストとして誰かに推薦することはあるとしても,管理人の趣味には合わない。

 勿論,これはフォープレイギタリストとしてのラリー・カールトンのことであって,他のラリー・カールトンのプロジェクトは大抵大好きです。個人的にはリー・リトナーの明るく前向きなトーンがフォープレイに合っていると思うのですが…。

 ラリー・カールトンフォープレイでの黄金期はブルーバード移籍後の第二期から! 『HEARTFELT』以降のラリー・カールトンは「リー・リトナーからは外れ,フォープレイの枠内で」弾きまくっております。はい。

  01. FREE RANGE
  02. DOUBLE TROUBLE
  03. ONCE UPON A LOVE
  04. ROBO BOP
  05. BLUES FORCE
  06. SAVE SOME LOVE FOR ME
  07. FORTRESS
  08. GO WITH YOUR HEART
  09. POCO A POCO
  10. A LITTLE FOURPLAY
  11. LUCKY
  12. MEOWWW

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 2000年発売/WPCR-10767)
(ライナーノーツ/中川ヨウ)

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