
言わば“フォープレイ・ファミリー”勢揃いの「銀婚式」であって,初代ギタリストのリー・リトナーと二代目ギタリストのラリー・カールトンもゲスト参加でお祝いに駆けつけている。
← リー・リトナーとラリー・カールトンの両雄は,バンドを実際に離れて改めて分かった“フォープレイ・サウンド”の素晴らしさに,ドサクサに紛れて自ら共演を懇願したように思えてしまう?
『シルヴァー』のテーマは『シルヴァー』。『シルヴァー』の楽曲のタイトルを眺めるだけで,どんだけ銀が好きやねん!
管理人が好きな『シルヴァー』は,重厚な列車がズンズンと迫ってくる感じの【QUICKSILVER】と切々と訴えかけてくる【A SILVER LINING】の2曲だけだったかなぁ。
『シルヴァー』の不発要因は「銀婚式」に“フォープレイ・ファミリー”以外の関係者を正規ゲストとして迎えてしまった結果だと思う。
凡人には理解し難いことだが『シルヴァー』にはボブ・ジェームスのサポートとして3人のキーボード・プレイヤーが演奏している。音のぶ厚い多重録音を行なったせいでセッション的要素は限りなく薄められ,せっかくのリー・リトナー&チャック・ローブ,ラリー・カールトン&チャック・ローブの共演も期待外れで終わっている。
その一方でテナー・サックスのカーク・ウェイラムとの共演では,単なる引立て役のバック・バンドで終わっている。この全てが大好きなフォープレイの演奏だと認めたくない。
そういうことでフォープレイにしては珍しく早々と駄盤が決定した1枚。『シルヴァー』はアルバムの印象が散漫すぎる。コンセプト・アルバムだというのにねぇ。『SNOWBOUND』がそうだったし,もしやフォープレイはコンセプト・アルバムが苦手なの?
思えばフォープレイとは,一時代を築いたジャズメン4人が,言わばセカンド・キャリア的に始めたバンド活動であったはずなのに,キーボードのボブ・ジェームス,ベースのネイサン・イースト,ドラムのハービー・メイソンの3人にとっては,今や気付けばフォープレイとしての活動の方がメインとなってライフ・ワークと化している。音楽性で意気投合したバンドは本当に強い!

誰が務めることになるとしても条件はただ1つ。ボブ・ジェームス&ネイサン・イースト&ハービー・メイソンのリズム隊の3人とリー・リトナー〜ラリー・カールトン〜チャック・ローブのフロントの3人。合計6人の全員が頑なに守り通してきた「フォープレイのバンド・サウンドの伝統」を重んじ守ってくれるギタリスト! その上での個性なのである! 今度こそパット・メセニーを迎えてほしいが,その可能性はゼロであることも承知しております…。
それにしてもフォープレイは,いいや,ジャズ/フュージョン界は「至宝の人材」を失った。大損失である。チャック・ローブさん「SEE YOU PARADISE」!
01. QUICKSILVER
02. HORACE
03. STERLING
04. A SILVER LINING
05. SILVERADO
06. MINE
07. SILVER STREAK
08. PRECIOUS METAL
09. ANIVERSARIO
10. WINDMILL
(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2015年発売/UCCO-1160)
(ライナーノーツ/熊谷美広)
(ライナーノーツ/熊谷美広)