DADDY PLAYS THE HORN-1 『DADDY PLAYS THE HORN』(以下『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』)と来れば,デクスター・ゴードン・ファン以外にとっては,とってもチャーミングなジャケット写真の名画であろう。管理人もこのジャケット写真が大好きである。

 しか〜し,デックスのマニアにとって『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』と来れば,麻薬禍→仮釈放中のお小遣い稼ぎ→なのに名演→どうなっているの!?であろう。

 それくらい『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』におけるデクスター・ゴードンテナーサックスが強い! 刑務所から出て1・2の3で吹いてこの名演デックスは並みのテナーマンとはレベルが違うのだ。その証明となる1枚なのだ。

 数年前に体操の内村航平が金メダル候補として騒がれていた頃のエピソードを聞いた時,なぜだか頭の中で『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』がシンクロした。
 内村航平が金メダルを取るための練習について「寝起きでも普通と変わらぬ演技ができる」「寝起きでも『6種目やれ』って言われたらできるくらいの安定感」というコメントを聴いて,思わず出所直後に録音されたのに,いつも通りの“威風堂々”デクスター・ゴードンな『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』が脳内の倉庫から飛び出してきたのだ!

 『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』の特徴とは懐の深いスイング感。ゆったりした展開での大ブロウがスケールの大きな音楽を鳴らしているということ。
 こういう音楽は誰かに教えられても出来るのもではなし,真似など出来っこない。デクスター・ゴードンの強烈な個性が鳴っている。そして最高のリズム隊が鳴っている。

 思えばピアノケニー・ドリューベースリロイ・ヴィネガードラムローレンス・マラブルのリズム隊が参加できたのも,仮釈放中ゆえの急造レコーディングが生んだ偶然の結果だと思う。
 『ダディ・プレイズ・ザ・ホーンセッションのためにケニー・ドリューに声がかかった時,ケニー・ドリューはいつも共演していたリロイ・ヴィネガーローレンス・マラブルとのトリオを希望したという。

DADDY PLAYS THE HORN-2 このケニー・ドリューピアノ・トリオデクスター・ゴードンの“味”と相性バツグン。リロイ・ヴィネガーローレンス・マラブルウエストコーストジャズな香りが「パリッ」とした感じで,とぼけた感じのデクスター・ゴードンテナーサックスがブライトに響いて聴こえる要因だと思う。

 『ダディ・プレイズ・ザ・ホーン』のハイライトは【CONFIRMATION】。チャーリー・パーカー得意の高速ナンバーのセオリーを無視して,ややスロー(それでも結構早いと思う)ながらも「山あり谷あり」の見せ場を伴い吹きこなしていく。
 リロイ・ヴィネガーの重いウォーキング・ベースを連れ回す,豪快なブロウにチャーリー・パーカーの面影はないはブランクなど感じさせないはで超カッコイイ系の演奏の一つとして推薦する。

  01. DADDY PLAYS THE HORN
  02. CONFIRMATION
  03. DARN THAT DREAM
  04. NUMBER FOUR
  05. AUTUMN IN NEW YORK
  06. YOU CAN DEPEND ON ME

(ベツレヘム/BETHLEHEM 1955年発売/TOCJ-62026)
(ライナーノーツ/ジョー・ミュランイェン,小川隆夫,岡島豊樹)

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