
それは事実であって事実ではない。なぜなら『フーティン・ン・トゥーティン』のリーダーは,テナー・サックスのフレッド・ジャクソンではなくアール・ヴァンダイクのオルガンだからである。
アール・ヴァンダイクのオルガンがテナー・サックスをリードしていく。そしてこのダークな音世界こそがアール・ヴァンダイクのオルガンの世界そのまんま。
アール・ヴァンダイクのオルガンが「漆黒の闇」に粘着している。べったりと張り付いている。
しかしそれだけではない。オルガン・ソロとなれば軽やかにスイングしていく。ブルージーで押してくる。
そう。モータウンのオルガニストとして活躍していたアール・ヴァンダイクの真骨頂が鳴っている。だから『フーティン・ン・トゥーティン』のリーダーはアール・ヴァンダイクのオルガンなのだ。
ではフレッド・ジャクソンのテナー・サックスはというとメインとして担がれただけのことはある。男らしいテナー・サックスの“らしさ”たっぷりの大ブロー。「漆黒の闇」に粘着しているテナー・サックスのイメージ通りな名演である。
そう。『フーティン・ン・トゥーティン』の第二の枕詞=ブルーノートの「幻の名盤」の所以は2人のリーダー,フレッド・ジャクソンとアール・ヴァンダイクの「せめぎ合い」と「譲り合い」の妙にこそある。
『フーティン・ン・トゥーティン』は,70%がアール・ヴァンダイクのオルガンで出来ているが,これぞ『フーティン・ン・トゥーティン』という特有の色を付けているのは,わずか20%フレッド・ジャクソンのテナー・サックスの方である。
( 残り10%はギターのウィリー・ジョーンズとドラムのウィルバート・ホーガンが奏でるオルガン・トリオ )

ウェザー・リポートがウェザー・リポートとして聴こえるためには,ジョー・ザビヌルのキーボードとウェイン・ショーターのテナー・サックスの両者が揃わなければならない。どちらか一方では絶対にウェザー・リポートの音とはならない。
『フーティン・ン・トゥーティン』をよくよく聴くと,これが実は先進的なジャズ・アルバムだという気分になってくる。ブルースだがソウルではない。R&B調の展開には重さを削った都会的な新鮮な響きが感じられる。
もしや,ジョー・ザビヌルとウェイン・ショーターはウェザー・リポートの1st『WEATHER REPORT』のモチーフとして「せめぎ合い」と「譲り合い」の『フーティン・ン・トゥーティン』をイメージしていたりして?
01. DIPPIN' IN THE BAG
02. SOUTHERN EXPOSURE
03. PREACH BROTHER
04. HOOTIN' 'N TOOTIN'
05. EASIN' ON DOWN
06. THAT'S WHERE IT'S AT
07. WAY DOWN HOME
(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-9034)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ダドリー・ウィリアムス,原田和典)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ダドリー・ウィリアムス,原田和典)
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