
でっ「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」である。そして『STRUCTURE ET FORCE』である。
『STRUCTURE ET FORCE』を聴いた瞬間,現在進行形の電化マイルスを体感したような気分がした。これだこれなのだ。
「DCPRG」は菊地成孔であり菊地雅章である。分かっている。電化マイルスとは全く別物だということも100%承知している。でもその上で,これだこれなのだ。
『STRUCTURE ET FORCE』のリリースで,少なくとも管理人のジャズ観が変わった。ジャズとは美メロが命ではない。ジャズの主役はクリエイトしたビートに楽しみがあるのだ。
管理人がこれだけ言うには訳がある。『STRUCTURE ET FORCE』には聴けるメロディーなど1つもない。リズムについても聴けるリズムなど1つもない。ただ耳に飛び込んでくるリズム。脳内に入ってくるリズムと格闘するアルバムである。
難度高めなのにポリリズムとは思えないほど聴きやすい音の洪水が快感である。雰囲気だけで盛り上がれるアルバムが『STRUCTURE ET FORCE』なのである。
そう。『STRUCTURE ET FORCE』こそが菊地成孔流の『ON THE CORNER』。『ON THE CORNER』的なものは“突然変異的”に表われる宿命なのだった。
だから「DCPRG」に,これ以上『ON THE CORNER』的なものを期待してはいけない。
事実『STRUCTURE ET FORCE』以降の「DCPRG」は『STRUCTURE ET FORCE』の二番煎じ的なものばかりに聴こえてしまい,急激に関心を失ってしまった。『STRUCTURE ET FORCE』は罪なアルバムなのである。
おおっと,このように書くと『ON THE CORNER』や『STRUCTURE ET FORCE』は支離滅裂で破綻し続ける即興演奏的なものをイメージするかもしれないので,ここで明確に否定しておく。
実は『ON THE CORNER』というアルバム。全てが計算づくのアルバムである。そして『STRUCTURE ET FORCE』もまた計算された『構造美』が浮かんでくるアルバムだと思う。複雑な構成を聴きやすくするために完璧に構築した『構造美』が眩しい。

切ないムードをふんだんに溢れさせる一方で,演奏の不安定さ。そこに隙や崩れたところなどない。さらにジャズの煙った空気やフリーの危うさもない。ソロやアドリブの探り合いや弛緩もなければ不穏さも敢えて抜いている。
ズバリ『STRUCTURE ET FORCE』にあるのは鋭利で整ったビートだけである。3管のブラスがメロディー方面ではなくビート方面に厚みを持たせている。全てがきっちり完璧にまとまっている。ミニマルな整然さがある。
「DCPRG」のメンバー14人の音が全方位的に鳴っている。踊れる要素をギリギリ残しつつも,異様に多い音数と分散した音の配置,殺人的な譜割によってポリリズムの快楽を追及したリズムの構築。打楽器パートの音に焦点を合わせる度,頭がグラグラと混濁する。
狂ったリズムに最初はノレナイ居心地の悪さがポリリズムを掴んでくるとどんどん居心地の良さに転換していく。テンポも高速一辺倒ではない。刻むビートと並行する複雑なリズムに慣れるとハマル。グルーヴするポリリズムが超気持ちいい〜。
01. Structure 1:LA STRUCTURE DE LA MODERNE
02. Structure 2:LA STRUCTURE DEL' AMERIQUE MEDIEVAL
03. Structure 3:LA STRUCTURE DU SOLIDE ROTATOIRE ET DE
LA PROSTITUTION
04. Structure 4:LA STRUCTURE DU TEMPLE ET PARADIS
05. Structure 5:LA STRUCTURE DES LIEUX DE PLAISIR ET DU
PORT
06. Structure 6:LA STRUCTURE L'EXTRACTION DU D'UNE
BOUTELILLE DE CHAMPAGNE
(Pヴァイン/P-VINE 2003年発売/PCD-18508)