IN TRADITION-1 ミシェル・ペトルチアーニフランク・アヴィタビレの関係性はキース・ジャレットブラッド・メルドーのような関係性の中にある。
 しかし現在この4人は対等ではない。フランク・アヴィタビレ1人だけが没落している。

 過去においてミシェル・ペトルチアーニキース・ジャレットブラッド・メルドーバド・パウエルの曲を演奏したことがある。
 しかしそんな超大物3人もフランク・アヴィタビレのように“しなやかに”バド・パウエルの曲を演奏したことはなかった。ミシェル・ペトルチアーニフランク・アヴィタビレが見初められたのも十分に理解できる。
 だからこそフランク・アヴィタビレの『IN TRADITIONAL』(以下『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』)の“その後”が何とも勿体ないと思うのだ。

 ミシェル・ペトルチアーニがプロデュースしたことが話題先行したフランク・アヴィタビレ。ハッキリ書くと『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』の主役はミシェル・ペトルチアーニであった。
 ミシェル・ペトルチアーニがどんな人材を発掘し,どのようにプロデュースしたのかに関心が向いた雰囲気があった。フランク・アヴィタビレミシェル・ペトルチアーニのおまけのように扱われていた。

 ミシェル・ペトルチアーニの死によってミシェル・ペトルチアーニのプロデュース作は『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』のたった1枚で終わったのだから,こんなことになるのならフランク・アヴィタビレは“ひっそりと”デビューした方が良かった? 遅かれ早かれ,絶対にいつかは拍手喝采される“ジャズ・ピアニスト”になっていたはずなのだから…。

 こんなことを書いたのもフランク・アヴィタビレピアノからは「ミシェル・ペトルチアーニの弟子」は飛び出してこない。
 『イン・トラディション〜フランク・アヴィタビレ・デビュー』がバド・パウエル集だったからそう思ってしまうのかもしれないが,思うにフランク・アヴィタビレビル・エヴァンスを聴いてこなかったのだろう。内省的な雰囲気など全く感じない。

IN TRADITION-2 それどころか伝えたいことが分かりやすいという点ではハービー・ハンコックっぽい。そう思って聞いているとハービー・ハンコックの“カメレオン”的なインパクトや端正さがしっかりと刻まれている。

 思えばミシェル・ペトルチアーニキース・ジャレットブラッド・メルドーデビュー作では静かだった。
 フランク・アヴィタビレの“カメレオン”的なインパクトや端正さが花開くのはこれからだ。…と本当にそう思っていた…。

  01. GETTIN' THERE
  02. TEMPUS FUGIT
  03. TOPSY TURVY
  04. TIME WAITS
  05. CELIA
  06. WILLOW GROOVE
  07. TROIS GROS
  08. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
  09. AUGUST IN PARIS
  10. BURT COVERS BUD
  11. WAIL
  12. KENNY
  13. BUD'S BUBBLE
  14. SILENCE

(ドレフュス・ジャズ/DREYFUS JAZZ 1998年発売/VACR-2029)
(ライナーノーツ/ミシェル・ペトルチアーニ,アルノー・メーラン)

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