
ただし,自分たちが作り上げた『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』をそう簡単には超えられないことを「スーパー・ギター・トリオ」の3人は理解している。だから新しいアイディアが『THE GUITAR TRIO』という1枚のアルバムになるまでに15年もの年月が必要だったのだ。
← 注:『フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ〜スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!』を,つい2年ほど前に聴いた管理人の感想はリアルに体感したアル・ディ・メオラ,ジョン・マクラフリン,パコ・デ・ルシアのファンより熱情が劣っても致し方ありません。残念。
『THE GUITAR TRIO』の第一印象は,随分と地味な演奏に感じられた。
ズバリ『THE GUITAR TRIO』の聴き所とは,緻密なアンサンブルを鳴らす手段としてのギター・バトルにある。つまりアドリブ一発のギター・バトルが繰り広げられるものではなく,全てが計算された構成の一部としてギターが登場している。
要はギターありきではなく音楽ありき。随分と大人なアコースティック・ギターの掛け合いがじわじわと来る! 奥行きのある構成と3人の共鳴するギターが心地よいバランスで押し寄せてくる!
『THE GUITAR TRIO』の聴き始めは,とにかく超高速カッティング&ピッキングに耳が奪われる。そして次第に早弾きと早弾きの間を埋める“メロディアスな”バッキングやフレージングに耳が行く。
そう。『THE GUITAR TRIO』は,アコースティック・ギター2本だけ,3本だけのジャズ・ギターによるアンサンブル集。
「スーパー・ギター・トリオ」におけるアル・ディ・メオラ,ジョン・マクラフリン,パコ・デ・ルシアの役所とは,アンサンブルの流れに合わせて,自分が主役を張った1秒後に脇役へ回っても,主役並みに光り輝くサイド・ギター・スタイル集。
ズバリ,自分の陣地に相手を引き込もうというスタイルのアル・ディ・メオラ,逆に相手の陣地に入り込むスタイルのジョン・マクラフリン,そして一番の自信家=パコ・デ・ルシアの「ついて来れるものならついて来い」スタイルの違いが,目まぐるしく交錯しては絡み合う,白熱のアンサンブル「裏バトル」集。

『THE GUITAR TRIO』は“売り”である,アクロバティックなギターの“名人芸”が聴き所に違いないがハイライトは「上質のジャズ・ギター」に違いない。
そう。『THE GUITAR TRIO』は,一部のギター・キッズだけが楽しむためのアルバムではない。実に音楽的なジャズ・ギターの“鳴り”に毎回魅了されてしまう。素晴らしい。
01. LA ESTIBA
02. BEYOND THE MIRAGE
03. MIDSUMMER NIGHT
04. MANHA DE CARNAVAL
05. LETTER FROM INDIA
06. ESPIRITU
07. LE MONASTERE DANS LES MONTAGNES
08. AZZURA
09. CARDEOSA
(ヴァーヴ/VERVE 1996年発売/POCJ-1350)
(ライナーノーツ/成田正)
(ライナーノーツ/成田正)
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