GOIN' UP-1 フレディ・ハバードのリーダー・アルバムである。フレディ・ハバードデビュー盤である。なのに“からっきし目立っていなかった”『オープン・セサミ』でのフレディ・ハバード
 ティナ・ブルックスである。マッコイ・タイナーである。当時はまだ無名の2人との共演である。

 ハンク・モブレーである。フィリー・ジョー・ジョーンズである。2ndアルバム『GOIN’ UP』(以下『ゴーイン・アップ』)では前作から一転して「ジャズ界のレジェンドたち」との共演である。

 『ゴーイン・アップ』でのベテラン組との対比によりフレディ・ハバードの“フレッシュさ”が際立って聴こえる。なので個人的には「若き日のフレディ」と来れば『オープン・セサミ』ではなく『ゴーイン・アップ』を連想してしまう。
← ちなみにフレディと聞けば,管理人にはフレディ・マーキュリーではなくフレディ・ハバードのことなのです! 愛輝くん!

 …と,この流れでついでに書けばフレディ・ハバードの場合,年代を遡るにつれ年を取って聴こえてしまうから不思議である。
 管理人の「初めてのフレディ・ハバード」がハービー・ハンコックの『処女航海』だったせいでもあるだろう。『オープン・セサミ』『ゴーイン・アップ』がコテコテのハード・バップだったということもあるだろう。

 NO! フレディ・ハバードの“耳年寄り”の理由とはフレディ・ハバードの“早熟”にある。同じ“早熟のトランペッター”でもリー・モーガンフレディ・ハバードではタイプが異なる。

 フレディ・ハバードの“早熟”の意味とは,圧倒的なテクニックを活かした演奏スタイルのことを指す。『ゴーイン・アップ』の時点ではブリリアントなフレーズは残念ながら出て来ていない。フレディ・ハバードが「ロックの洗礼」を受けたのはもう少し先のことである。
 事実『ゴーイン・アップ』の聴き所はフレディ・ハバードの“ブルース・フィーリング”にある。

 例えば,ケニー・ドーハムの代表曲として名高い【LOTUS BLOSSOM】をフレディ・ハバードは【ASIATIC RAES】という題名でアレンジして演奏しているのだが,これが“本家以上の”大名演仕上げ! 【LOTUS BLOSSOM】の“熱風ブルース・バージョン”の完成であった。

GOIN' UP-2 【ASIATIC RAES】の聴き所は,フィリー・ジョー・ジョーンズの高速パッセージに負けない,フレディ・ハバードの“超絶技巧”高速パッセージによる“ブルース・フィーリング”の交歓にある。

 フィリー・ジョー・ジョーンズの爆裂ドラミングに煽られて疾走するのだが,高速運転中なのに余裕溢れるブルースを吹き上げるフレディ・ハバードのテクニックは流石! 演奏が進行するにつれフィリー・ジョー・ジョーンズドラムが落ち着いていく様がハイライト!

 【BLUES FOR BRENDA】では,野太く重心の低い中低域のトランペットでスタートから攻めていたがフレディ・ハバードが,終盤のハイノートで「天へと昇る」あの甲高い音色が忘れられない!
 旧い時代のバッパーを演じきったハード・バップ・スタイルのトランペットハンク・モブレーのマイルド・テナーを抑えつけた瞬間のカッコ良さが忘れられない!

  01. ASIATIC RAES
  02. THE CHANGING SCENE
  03. KARIOKA
  04. A PECK A SEC
  05. I WISHED I KNEW
  06. BLUES FOR BRENDA

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-6575)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,土倉明)

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