VIGOROUS-1 『VIGOROUS』を買ったのは東京ザヴィヌルバッハの『A8V(ON THE EARTH)』を買った3日後のことだったことを覚えている。
 『A8V(ON THE EARTH)』にハマッタ。そして坪口昌恭にハマッタ。そしてよく調べもせずにアマゾンで坪口昌恭の最新作だった『VIGOROUS』をポチッ。

 たまたま選んだ『VIGOROUS』が,管理人の東京ザヴィヌルバッハへハマル流れを止めたのは皮肉な結果。だって機械ではなく生身の人間の方が凄いということを再確認出来たから!

 そう。『VIGOROUS』のドラマーとは“あの”オラシオ・エルネグロ・エルナンデス
 これが並みのドラマーだったら「M」の連勝街道一直線だったのかもしれないが,オラシオ・エルネグロ・エルナンデスの爆撃ドラミングの「グルーヴの波」が,坪口昌恭が書いた美メロと「ハモる瞬間の波」が最高に気持ちいい。

 管理人が『VIGOROUS批評で書きたいことは,人力ドラムの優越性,というか,元々,人間と機械を比べてはいけないということ。
 音楽シーンはこの後「ドラムンベース」に流れていったが,JIMSAKUを例に出すまでもなく,音楽のテクニック,もっと言えば音楽の世界でコンピュータが人間を超えるのは遠い先の事であって,個人的に機械は人間を永遠に超えられないと思っている。

 そう感じているのは管理人だけではない。坪口昌恭もまたその中の1人である。
 仮に『VIGOROUS』のリズム隊を「M」で演奏していたなら面白くも何とない音楽で終わっていたように思う。終始正確でそしてプログラミングによって予想だにしないリズムを打ち叩いてくる「M」は本当に凄いと思う。

 しかし,ジャストではない前ノリとか後ノリの感覚。譜面では決して指示出来ないノリを坪口昌恭は『VIGOROUS』で表現している。
 『VIGOROUS』の楽曲はどれもが速攻前のめりテクニカル。こんな楽曲群を演奏するには打ち込み系が向いているのだが,それは坪口昌恭の音楽を理解した機械演奏の話なのだ。

VIGOROUS-2 『VIGOROUS』のハードな演奏は「複雑なメロディ・ライン」にある。キャッチーなメロディではない。テクニックひけらかしでもない。“器楽的に”メロディアスなのだ。

 これである。“器楽的に”メロディアスな表現は人力でしか表現できない。だからドラムオラシオ・エルネグロ・エルナンデスなのである。オラシオ・エルネグロ・エルナンデスの爆撃ドラミングが演奏に“強度と味”を加えている。

 主役である坪口昌恭エレピは終始奥で鳴っている間違った印象操作。
 坪口昌恭が意識的に後ろに下がって弾いているわけではない。よく聴けば主軸は鍵盤にあるのだが,躍動感あるリズムと冷静にグルーヴする鍵盤の対比が不思議なストイックさを醸し出している。

 『VIGOROUS』で耳に付くのは構成の複雑さとたやすく弾きこなすテクニック。個々の演奏の猛烈な確かさと歌心にシビレまくる名盤だと思う。

  01. African Eagle
  02. Southern Cross
  03. Tasogare Boomerang
  04. Power Rose
  05. Nostalgica
  06. Pastel Yogurt

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2004年発売/EWBE-0012)
(紙ジャケット仕様)

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