
しかし『ハブ・キャップ』には,ジャズ界のその後,を先取りしたフレディ・ハバードの功績について語られるべきであろう。フレディ・ハバードは一介のトランペッターではない。
フレディ・ハバードが『ハブ・キャップ』で試みた3管ユニゾン・セクステットが真価を発揮したのは,フレディ・ハバード自身もプレイヤーとして創作に参加した,ウェイン・ショーターを擁するジャズ・メッセンジャーズであった。
“天才”ウェイン・ショーターの手を借りた『MOSAIC』で,ついにフレディ・ハバードのアイディアが「UPDATE」され花開いた。
そんなジャズ・メッセンジャーズの『MOSAIC』への「原石セッション」となった『ハブ・キャップ』には,もう1つ,フレディ・ハバードの音楽観が秘められている。
フレディ・ハバードはこれまで『OPEN SESAME』『GOIN’ UP』と豪華な先輩たちの胸を借りてソロ・アルバムを制作してきたが,第3弾となる『ハブ・キャップ』での大物はフィリー・ジョー・ジョーンズぐらい(まっ,後にみんなBIGになったのだけど)。
トロンボーンにジュリアン・プリースター,テナー・サックスにジミー・ヒース,そして後にジャズ・メッセンジャーズでもコンビを組むこととなるピアノにシダー・ウォルトンを迎えたフレディ・ハバードの3管ユニゾン・セクステットの人選は,いつものアルフレッド・ライオンではなくフレディ・ハバード本人であった。
念願のメンバーで念願の3管ユニゾン。『ハブ・キャップ』こそがフレディ・ハバードが本当に演りたかったジャズだった,と言い切ってしまおう。
フレディ・ハバードにとって3管とは,自分自身が一番輝く理想の編成である。なぜならばフレディ・ハバードの持ち味であるメタリックなトランペットは言ってみれば「淡泊」。そこへトロンボーンとテナー・サックスがトランペットの両隣りで「味わい深い陰影」をつけてくれる。

フレディ・ハバードのトランペットにもジャズ・メッセンジャーズの時のような伸びは小さく,アンサンブルの要を担うというミッションを全うしようとしている印象である。
それもこれも全ては念願の3管ユニゾン達成のため。アンサンブル・ハーモニーのためである。『OPEN SESAME』『GOIN’ UP』では1曲だけだったオリジナルも『ハブ・キャップ』では4曲作曲。
そう。『ハブ・キャップ』の録音時にフレディ・ハバードに足りなかったのはアレンジ力の1点だけ! そのアレンジ力も才能の欠如ではない。モードという新しいジャズの言語にまだ馴染めていなかっただけ!
管理人の結論。『ハブ・キャップ』批評。
フレディ・ハバードは従来のハードバップ・スタイルに範を求めながらも『ハブ・キャップ』で確実に新しい時代への布石を打っている。
フレディ・ハバードの新しい地平を目指そうとする意気込みと発展途上の魅力がたまらない。
01. HUB CAP
02. CRY ME NOT
03. LUANA
04. OSIE MAE
05. PLEXUS
06. EARMON JR.
(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-4073)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,後藤誠,小林貢)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,後藤誠,小林貢)