
『ハブ・トーンズ』でフレディ・ハバードがジャズ・ジャイアントの仲間入りを果たした。
『ハブ・トーンズ』以前のフレディ・ハバードの強みとは「超一流トランペッター」の1点のみ。作曲や編曲やリーダーシップの面ではまだまだであった。
それがどうだろう。『ハブ・トーンズ』では突進するトランペットも過去最高の出来であるが,作曲も編曲もリーダーシップも含めて全ての面において同世代のトランペッター以上に秀でている。
ついに『ハブ・トーンズ』でフレディ・ハバードがジャズ・シーンの先頭を走るトランペッターとして躍り出たのだ。
フレディ・ハバードの内面が成長している。具体的にはトランペットから,味気のないフレージングや深みの無い音色が流れることがなくなった。それどころか“情状派”への転身とも取れるトラックが並んでいる。
例えば【YOU’RE MY EVERYTHING】というジャズ・スタンダードを,ふくよかな音色で歌心たっぷりに歌いきる。
そして特筆すべきはミュートではない繊細な表現にある。フレディ・ハバードはテクニカルなトランペッターだあるが,ハイテクニックが嫌みでなく,最良の塩梅に仕上がっていると思う。
【HUB−TONES】での音響の隅々までなめて踊るよう素晴らしいアドリブに燃え上がる。
フレディ・ハバードのトランペットと来れば「世界一のフィンガリング」であろうが【HUB−TONES】での演奏と来れば,内なる感情表現に「世界一のフィンガリング」でさえ追いついて行けない印象を受ける。それだけ内に秘めたものが圧倒的なのだ。
あくまで会話をするような調子で,猛烈なインプロヴィゼーションが放出される。それを一瞬でアドリブ構成するセンスが群を抜いて現代的で格好良い。

誰もが認める【I REMEMBER CLIFFORD】の様な名曲ではないかもしれない。だがどこか幽玄的で灰色な雰囲気を醸し出すこのバラードはブッカー・リトルにピッタリの曲調がお見事!
さて,そんなフレディ・ハバードの“覚醒”請負人がピアノのハービー・ハンコック。
『ハブ・トーンズ』で初共演を果たしたフレディ・ハバードとハービー・ハンコックのコンビがその後「新主流派」というジャズの歴史を創っていくことを互いにまだ知る由もないのだが,やっぱり相性チリバツ! ハービー・ハンコックのバッキング最高!
01. YOU'RE MY EVERYTHING
02. PROPHET JENNINGS
03. HUB-TONES
04. LAMENT FOR BOOKER
05. FOR SPEE'S SAKE
(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-4115)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,原田和典,菅原正晴)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,原田和典,菅原正晴)