THE BODY & THE SOUL-1 『THE BODY & THE SOUL』(以下『ボディ・アンド・ソウル』)の主役はフレディ・ハバードではない。ウェイン・ショーターである。

 そんな主役の2人は共にジャズ・メッセンジャーズの同僚として活動中。共演を重ね,新しいアンサンブルを重ねながらフレディ・ハバードの方からウェイン・ショーターを誘ったのかな? 『ボディ・アンド・ソウル』にはそんな“ウェイン・ショーター印”の音が鳴っている。

 『ボディ・アンド・ソウル』のレコーディング・メンバーは,トランペットフレディ・ハバードテナーサックスウェイン・ショーターアルトサックスエリック・ドルフィートロンボーンカーティス・フラーピアノシダー・ウォルトンベースレジー・ワークマンドラムルイ・ヘイズ

 そう。『ボディ・アンド・ソウル』は,アート・ブレイキー抜きのオール・ジャズ・メッセンジャーズによるスモール・コンボ+拡大されたビッグ・バンド&オーケストラ編成。
 ジャズ・メッセンジャーズの亜流にして,こちらこそが本流と思わせる“HOTな”フレディ・ハバードと“COOLな”ウェイン・ショーターの方向性が一致が名演である。

 『ボディ・アンド・ソウル』の印象を一言で書けば,大編成なのに「全くうるさくない」。フレディ・ハバードにだけは自由に吹かせておいて,バックには抑制を求めているから,音楽全体がなめらかで,知的な響きがする。
 これほどの大物メンバーが個性を抑えてビッグ・バンドのアンサンブル吹きで満足させることができたウェイン・ショーターの“天才”ぶり。ストリングスについても,よくある甘すぎるムードもなく,アーティスティックに鳴らし過ぎることもない。

 “音楽監督”ウェイン・ショーターにとって『ボディ・アンド・ソウル』のようなアレンジ・アルバムの制作は,おおよそ30年後となる『HIGH LIFE』や『ALEGRIA』の登場まで待たなければならない。
 それくらいにウェイン・ショーターにとって『ボディ・アンド・ソウル』は快心の出来だったのだろう。世界指折りのトランペッターフレディ・ハバードがアンサンブルの核を張っているのだから,アレンジ・アルバムは『ボディ・アンド・ソウル』で完結したとしても当然だと思う。

THE BODY & THE SOUL-2 『ボディ・アンド・ソウル』のソロイストフレディ・ハバードエリック・ドルフィーの2人。
 ただし,2人とも編曲の流れを壊さないようなソロであって勿体ない。特にエリック・ドルフィーウェイン・ショーターの共演は,恐らく録音物としては『ボディ・アンド・ソウル』の1作だけだと考えられている。

 その意味で『ボディ・アンド・ソウル』の没テイク。それもエリック・ドルフィーの突飛なソロがオクラの原因となったトラックが残ってはいないのだろうか?

  01. BODY AND SOUL
  02. CARNIVAL (MANHA DE CARNAVAL)
  03. CHOCOLATE SHAKE
  04. DEDICATED TO YOU
  05. CLARENCE'S PLACE
  06. ARIES
  07. SKYLARK
  08. I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
  09. THERMO

(インパルス/IMPULSE! 1963年発売/UCCU-5278)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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