REED MY LIPS-1 ジャズフュージョンの実力派サックス・プレイヤーとして活動していた本多俊之だったが,幸か不幸か,「ニュースステーション」&『マルサの女』の大ヒット以来,TV・CM・映画での多国籍系音楽のリリースばっかり。

 ジャズフュージョンを演奏する本多俊之のファンとしては一向に発売されることのない「ラジオ・クラブ」名義ではない,1人のサックス・プレイヤーとして,ジャズフュージョンと勝負する新作を待ちきれずに,次第に距離を置いていたのだが,そんな本多俊之が久々にリリースしたフュージョン・アルバムが『REED MY LIPS』(以下『リード・マイ・リップス』)であった。

 『リード・マイ・リップス』は,単なるコマーシャルなフュージョン・アルバムではない。本多俊之の体内でフュージョンを演奏したいという抑えきれない欲求が高まったのだろう。
 ドラムヴィニー・カリウタベースニール・スチューベンハウスギターマイケル・ランドウパーカッションマイケル・フィッシャートランペットジェリー・ヘイトランペットゲイリー・グラントアルトサックスラリー・ウイリアムステナーサックスピート・クリストリーブギター梶原順パーカッション横山達治という真にワールド・クラスのセッション・ミュージシャンが「本多俊之フュージョン」のために集結している。

 こんなにも名うてのテクニシャンを集めたのだから『リード・マイ・リップス』での目的はただ1つ。とにかく熱く爽やかなセッションで盛り上がるだけ! 作曲家や編曲家としての“売れっ子”としてではなくフュージョンサックス・プレイヤーとしての“売れっ子”として,今一度,フュージョン・シーンの最前線で勝負したい! そんな意気込みが伝わってくるアルバムだと思う。

 『リード・マイ・リップス』は,LAフュージョンとJ−フュージョンの2つのセッション・チームに分かれているのだが,録音を聴き比べてみて,どっちがLAでどっちが国内だとか,そんな切れ目など微塵も感じられない。
 そう。『リード・マイ・リップス』の9曲全てが「本多俊之フュージョン」としか語れない。

REED MY LIPS-2 『マルサの女』と『リード・マイ・リップス』。音楽の出発点も終着点も雰囲気もまるっきり異なっているのに,そのどちらにも本多俊之サックスの存在感が色濃い。明るく明快なフレーズにスリリングなテイストを添えている。

 本多俊之サックスが爽やかに響く。ハードに吹いてもソフトに吹いても,まろやかでいつも優しさに包まれる。
 なんだか,あのヴィニー・カリウタマイケル・ランドウでさえも,本多俊之と“笑顔で”セッションしている様子が音から伝わってくる。

 「本多俊之フュージョン」の快作『リード・マイ・リップス』が素晴らしい。
 管理人の心配は,余りにも『リード・マイ・リップス』の出来が良すぎるだけに,本多俊之セッション・アルバムの制作に満足して次をやめてしまうこと。
 事実,2008年現在,実に16年もの間,本多俊之フュージョンがリリースされていない。またもや本多俊之ジャズフュージョンから距離を置いてしまうこと。
 どうか『リード・マイ・リップス』が,本多俊之・ラストのフュージョン・アルバムとなりませんように…。

 
01. CRASH COURSE
02. LA JOLLA
03. INASE NIGHT
04. MIND GAMES
05. SIESTA
06. FANCY FREE
07. COMME CI, COMME CA
08. HIGH SPEED CHASE
09. 約束の夏〜Farewell my summer

 
TOSHIYUKI HONDA : Soprano Saxophone, Alto Saxophone, Keyboards
VINNIE COLAIUTA : Drums
NEIL STUBENHAUS : Bass
NORIYUKI TAKAHASHI : Bass
MICHAEL LANDAU : Guitar
JUN KAJIWARA : Guitar
REI ATSUMI : Keyboards
MICHAEL FISHER : Percussion
TATSUJI YOKOYAMA : Percussion
JERRY HEY : Trumpet
LARRY WILLIAMS : Alto Saxophone
GARY GRANT : Trumpet
LEW McCREARY : Bass Trombone
PETE CHRISLIEB : Tenor Saxophone
KEIJI TORIYAMA : Synth. Operator

(東芝EMI/WHO RING 1992年発売/TOCT-6702)

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啓示3章 サルデスへの言葉,フィラデルフィアへの言葉,ラオデキアへの言葉
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