
ズバリ,フレディ・ハバードの“最高傑作”が『RED CLAY』(以下『レッド・クレイ』)である。
『レッド・クレイ』の成功の秘訣は,新主流派の創作で得た高度で多彩なアプローチを,CTI独特のポップな意匠で包み込んだエイト・ビートのクロスオーバー・ジャズ。
こんなクロスオーバー・ジャズを演奏できたのは『レッド・クレイ』セッションに集まったメンバー全員が新主流派の重鎮だったからであろう。この非フュージョンの独特なノリは新主流派をリアルタイムで経験しないと出て来ないように思う。
トランペットのフレディ・ハバード,テナー・サックスのジョー・ヘンダーソン,エレクトリック・ピアノのハービー・ハンコック,エレクトリック・ベースのロン・カーター,ドラムのレニー・ホワイトがエレクトリック・コンセプトで熱演している。
そう。ハービー・ハンコックがエレクトリック・ピアノを弾いている以外は,ゴリゴリの「王道ジャズ」な1枚である。
フレディ・ハバードの突き抜けるハイトーンと,エレクトリック・ベースでぐいぐい引っ張るロン・カーターのドライブ感にヤラレテしまう → フォードのV8エンジン的な8ビートに削られてしまう → 重量級の4WD的な4ビートに鷲掴みされてしまう。
『レッド・クレイ』には,パワフルで色彩豊かでポピュラリティなフレディ・ハバードの個性が投影された大名演なのである。

ハービー・ハンコックのメロウなエレピが入ると,単なるオールド・ジャズの焼き直しではなくなる大名演。
ハービー・ハンコックにとって「V.S.O.P.」への伏線は『レッド・クレイ』にあった。
マイルス・デイビスを担ぎ出せずとも,マイルス・デイビスの後継者=フレディ・ハバードを担ぎ出せればそれで十分だった。フレディ・ハバードのトランペットの何とも言えぬイメージング!
01. Red Clay
02. Delphia
03. Suite Sioux
04. The Intrepid Fox
(CTI/CTI 1970年発売/KICJ 2332)
(☆BLU−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/小川充)
(☆BLU−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/小川充)