
…というか,テナー・サックスのベニー・ウォレスって誰? お恥ずかしながらベニー・ウォレスについてはこのアルバムで初めて知った。
だからなのだろう…。チック・コリア以上に,初めて耳にしたベニー・ウォレスの個性に魅了されてしまった。
ベニー・ウォレスのテナー・サックスの特徴は,豪放でエモーショナルなブロウ。しかし,これがストレートな表現ではないのだ。決して難しい表現ではないのだが,余り聴き慣れない音階での大らかなブロウ。
トリッキーで引っ掛かるフレーズが淀みなく出てくるプレイ・スタイルが,どこかエリック・ドルフィーっぽい感じというか,サックスではないがどこかセロニアス・モンクっぽいというか…。
そんなベニー・ウォレスだから,いつもはベースのエディ・ゴメスとドラムのダニー・リッチモンドとのピアノレス・サックス・トリオでブイブイ言わせている。
そんな完成されたピアノレス・フォーマットに「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を解散し,再びアコースティックなジャズと向き合い始めたチック・コリアがゲスト参加している。とてもゲスト参加とは思えない4人の連動ぶりに何度驚かされたことであろう。
そう。『ベニー・ウォレス&チック・コリア』は一期一会のセッション・アルバムにして,出会うべくして出会ったベニー・ウォレスとチック・コリアのバンド演奏のフロントマンの音で満ちている。

『スリー・カルテッツ』が1981年録音。『ベニー・ウォレス&チック・コリア』が1982年録音。この論理,案外当たっている!?
あのマイケル・ブレッカーとベニー・ウォレスがチック・コリアを介してシンクロしている! チック・コリアの硬質でモダンで不協和音的なピアノ響きが2人のテナー・タイタンを躍らせている! 狂わせている!
凄いぞ,チック・コリア!
01. THE BOB CROSBY BLUES
02. MYSTIC BRIDGE
03. MY ONE AND ONLY LOVE
04. FOXTROT
05. 'LLOWED
06. OUTLINE
(エンヤ/ENJA 1982年発売/K30Y 6234)
(ライナーノーツ/上蔭彰太)
(ライナーノーツ/上蔭彰太)
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