
そのうちシャカタクとレヴェル42は「ブリティッシュ・ファンク」と称される,上物はお洒落なロマンティック系なのに下物はビンビン・ビートがたまらない。共に歌ものが大ヒットしたのでフュージョン界の人気バンドとして現役活動中のバンドでもある。
残るメゾフォルテとフルーツケーキだが,こちらは同じヨーロッパでもメゾフォルテがアイスランドでフルーツケーキがオランダである。ヨーロッパの小国でニッチな市場を荒らしまくったフュージョン・バンドである。
アメリカン・フュージョンに近い「ブリティッシュ・ファンク」とは一線を画す,クラシック王国,ヨーロッパ発のアドリブ偏重ではなくメロディー・ラインとアレンジを重視した「親しみやすいポップ・フュージョン」に身も心も癒される。
未だスタイルを変えながら活動を続けるメゾフォルテとは違い,全精力を3枚のアルバムに捧げて解散したフルーツケーキだが,その3枚の魅力を絞ると,デビュー・アルバム『FRUITCAKE』(以下『フルーツケーキ』)1枚の音に集約されると思う。
フルーツケーキの七不思議。フュージョン・バンドなのに一番“バンドっぽい”のがデビュー・アルバムであって,2枚目はユニットっぽいし,3枚目はセッションっぽい。時が進むにつれてバンドが崩壊していく印象を持つ。時代にもニーズにも逆行していく“ブラック・ホール・バンド”の1つだと思っている。
そんな一番端正なフュージョン・サウンドがアルバム1枚,丸ごと楽しめる『フルーツケーキ』。
1曲1曲の出来が最高に素晴らしい。全曲イントロが流れ出すと,ワクワク・ドキドキ・ウキウキ・たまに涙。お洒落で透明で癖がないので,直にメロディーが耳に,頭に,身体全体に沁み渡っていく。ベニー・バンの美メロがダイレクトに入ってくる。
レヴェル42のように「ファンク」するのではなく,明るく軽快にステップしながら階段を登る気分? 実に爽快で快感である。
そんなフルーツケーキの個性がちょっとしたBGMに最適であった。商用利用されまくった。80年代のある時期,管理人だけでなく全日本国民の耳に,頭に,身体全体に,TVやラジオ番組のBGMを通して浸透した。
あのバブル景気の明るい未来の印象操作に『フルーツケーキ』が一役買っていたのだ。管理人は本気でそう思っています。ペコリ。
だから管理人は宣言する。『フルーツケーキ』を1枚聴き通して,この中の1曲すら聞いたことのないという人は,ジャズ/フュージョンに限定されない「音楽モグリ」である(帰国子女は除く〜)。

01. I LIKE THE WAY
02. A LITTLE PLACE IN MY HEART
03. PARTY IN BRASIL
04. WE'RE HERE TO PLEASE YOU
05. YOU'VE GOT ME GROOVIN'
06. RIO DREAM
07. WHEELIN' AND DEALIN'
08. SUMMER MELODY
09. IN THE RIGHT DIRECTION
10. SHORT TIME
11. TRY SIX
12. MELTING POT
(ビクター/JVC 1984年発売/NCS-746)
(ライナーノーツ/苦楽健人,熊谷美広)
(ライナーノーツ/苦楽健人,熊谷美広)