PRIMA DEL TRAMONTO-1 山中千尋の『PRIMA DEL TRAMONTO』(以下『プリマ・デル・トラモント』)は「ミセス・山中千尋」のものであって「ちーたん」のものではない。

 管理人がこう宣言するのは(こう宣言しなければならなくなったのは)『プリマ・デル・トラモント』のCDジャケットの破壊力のせいである。
 まず『プリマ・デル・トラモント』について語らねばならないのは(不本意ながら)ビジュアルである。これまでの歴代のCDジャケット山中千尋の美しさ,キュートでチャ−ミングな容姿を“売り”にしてきたに違いない。
 『プリマ・デル・トラモント』における山中千尋の美しさが「桁違い」。圧倒的である。それにしても男目線だよなぁ。本当はこんなジャケットが大好きなんだけど,どことなくアイドルの写真集を買うことに似た“ためらい”を感じた。ネット通販って便利な世の中です。はい。

 さて,話を本論に戻そう。世の男性の中には『プリマ・デル・トラモント』を“ジャケ買い”した人がいるかもしれない。買いたくなる気持ちは分かる。でも,正直
プリマ・デル・トラモント』を“ジャケ買い”などしてほしくはない。山中千尋をビジュアル系の一人のような扱いで聴いてほしくはない。

 可能なら『プリマ・デル・トラモント』は内容とジャケットを切り離して聴いてもらいたい。ジャケットが星5つならば内容は星6つの超名盤だからだ。

PRIMA DEL TRAMONTO-2 そう。『プリマ・デル・トラモント』は,これが例えば,ブサイク系の写真のジャケットとか,あるいは真っ黒や真っ赤なジャケットであっても購入すべき超名盤である。
 だから本当は『プリマ・デル・トラモント』の紹介としてジャケットの話なんかは書きたくなかった。でもブルーノート側が,絶対に避けて通ることのできない大インパクトの写真を使ってきたのだからお許しを〜。

 …と言うことで,ジャケットの賛否抜きに,演奏内容を大絶賛する『プリマ・デル・トラモント批評のはじまりはじまり〜。

 『プリマ・デル・トラモント』のテーマは2つある。1つはブルーノート所属アーティストとしてのブルーノート創立80周年としてブルーノートのヒット曲(と言っても【CHEROKEE】【SWEET LOVE OF MINE】【BLUE MINOR】の3曲だけ。【C JAM BLUES】はブルーノート“馴染みの”1曲ということで)を取り上げたアルバムである。
 もう1つは山中千尋の愛するミシェル・ペトルチアーニ没後20周年として,ミシェル・ペトルチアーニの愛奏曲(と言っても【PASOLINI】【LOOKING UP】の2曲だけ)を取り上げたアルバムでもある。

PRIMA DEL TRAMONTO-3 まっ,ミシェル・ペトルチアーニブルーノートの契約アーティストだったから強引にブルーノート・クラシックとして扱うのもありなのだが,残りの5曲はいつも通りの山中千尋オリジナル集。
 結局のところ山中千尋の魅力とは,元ネタあっての“絶品のアレンジ力”にあるのだが,最近の傾向として,ちょっと落ち着いてきた「ちーたん」というか,オリジナルの雰囲気を大切にした“絶品のピアノ・トリオ”の方に主戦場があるように思う。

 その意味で『プリマ・デル・トラモント』は「ちーたん」ではなく「ミセス・山中千尋」によるストレートなジャズ・アルバム。
 こういう「淑女系のピアノ」が,これまたたまらなくよいし,エレピで狂喜しない,真面目で素直な「ちーたん」の真骨頂でもある。1人の“ジャズ・ピアニスト”としてのシンプルな立ち振る舞いが実にお見事である。
 成熟した雰囲気と新機軸が同居している。肩の力が抜けていながらも新しい展開が垣間見える。小気味の好いジャズピアノが2つのリズム・セクションの個性に合わせてスイングし続けている。自然と音楽に没頭できる。実に素晴らしい。

 『プリマ・デル・トラモント』をフラゲしてから聴きまくったこの1ヶ月間。【GENNARINO】【PASOLINI】【NEVER】【LOOKING UP】の神曲3曲に,身も心も首ったけのメロメロ状態が続いている。

PRIMA DEL TRAMONTO-4 あれれっ? この4曲を選曲したことに自分自身で驚いている。管理人はこれまでずっと山中千尋と来れば,アレンジを崩しまくった,誰にも真似することのできない孤高の“変態サウンド”が大好きだった。
 それって大抵の場合はエレピの「ちーたん」が代名詞であった。なのに『プリマ・デル・トラモント』のお気に入りはアコースティックピアノばかり。

 『プリマ・デル・トラモント』のリズム隊には,レギュラー・トリオである脇義典ジョン・デイヴィスに加えて,今を時めくロバート・グラスパートリオヴィセンテ・アーチャーダミオン・リードが参加している。
 これまでの管理人ならロバート・グラスパートリオのリズム隊に耳が行くはずなのだが,耳に付くのは脇義典ジョン・デイヴィス組の緩急自在なリズムの方。

 山中千尋の音楽性を数年後に振り返った時『プリマ・デル・トラモント』が「ミセス・山中千尋」の転換点になった,と評価するかもしれません。
 どうやら管理人は制御不能なエレピの「ちーたん」よりも,安定の本格路線「ミセス・山中千尋」が好きになってしまったようなのです。

PS 「PRIMA DEL TRAMONTO-4」は販促用のクリアファイルです。

   CD
  01. Gennarino
  02. Pasolini
  03. Thinking Of You
  04. Never
  05. Cherokee
  06. Sweet Love Of Mine
  07. Looking Up
  08. Blue Minor
  09. Solitude/C Jam Blues
  10. Prima Del Tramonto

   DVD
  01. Cherokee
  02. Cucciolo
  03. Sweet Love Of Mine

(ブルーノート/BLUE NOTE 2019年発売/UCCJ-9218)
★【初回限定盤】 UHQCD+DVD

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