
しかし,この3人に限っては単なる「2世ジャズメン」という言葉では言葉でが足りない。今や“親の七光り”を超えて,ジャズ界全体にまで影響を及ぼす「真打ち」の立場に座している。市川海老蔵級なのである。
そんな「2世ジャズメン」の活躍ぶりを見聞きする時,親の顔(親の音)が気になってくるというもの?
ウイントン・マルサリスの父親とはブランフォード・マルサリスの父親でもある「ニューオーリンズ・センター・フォー・クリエイティブ・アーツ」のエリス・マルサリス。ジョシュア・レッドマンの父親とはキース・ジャレットの「アメリカン・カルテット」のデューイ・レッドマン。チャーネット・モフェットの父親とは「オーネット・コールマン・トリオ」のチャールズ・モフェット。
見事な血統! 優秀なサラブレット!
NO! エリス・マルサリス,デューイ・レッドマン,チャールズ・モフェットが育てたのは自分の実の息子だけではない。
その良い例がチャーネット・モフェットがチャールズ・モフェットと親子共演を果たした『MOFFETT & SON’S』(以下『モフェット&サンズ』)の中に「師弟の音」が色濃く出ている。
そう。『モフェット&サンズ』におけるチャールズ・モフェットの息子とはベースのチャーネット・モフェット1人だけではない。
言わば「義理の息子」であろう,トランペットのフィリップ・ハーバーとウォレス・ルニー,テナー・サックスのビル・ピアスとデビッド・サンチェスとジョシュア・レッドマン,ピアノのジェームス・ウィリアムスの超一線級の面々たち。

ただし,そんなチャーネット・モフェットに指示を送るのがチャールズ・モフェットのドラムであった。チャールズ・モフェットが子供世代の新感覚に付いていっているだけではなく,安定感を保ちながらも新世代を“煽っている”。
オーネット・コールマン・トリオのフリー・ジャズ・ドラマーの本領発揮にして,やすやすと叩き出された極上のリズムに貫録が漂っている。
そう。この凄腕世代をひとまとめにして“モフェット・ファミリー”へと迎え入れたチャールズ・モフェットのドラミングが“旗頭”である。
01. IMPRESSIONS
02. TICO TICO
03. HOE DOWN
04. SUGAR
05. STOLEN MOMENTS
06. DELILAH
07. WORK SONG
08. 81
(スイート・ベイジル/SWEET BASIL 1995年発売/APCZ-8031)
(ライナーノーツ/土倉明)
(ライナーノーツ/土倉明)