ALTO MEMORIES-1 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンである。この2人の名前の並びを見ると,ゲイリー・バーツ個人でもソニー・フォーチュン個人でもなく,一気に電化マイルス・モードへトリップしてしまう。

 それぐらいにマイルス・デイビスの信者にとってはパワーのある名前である。ゲイリー・バーツソニー・フォーチュン在籍時のマイルスのバンドこそが“帝王”マイルス・デイビスのキャリアの頂点と重なっている。

 そう。キース・ジャレット在籍時のゲイリー・バーツと『アガパン』でのソニー・フォーチュン。そんな2人の共演盤が発売されると聞けばマイルスのファンなら買わずにはいられないというもの。

 ただし『ALTO MEMORIES』(以下『アルト・メモリーズ』)は,非・電化マイルスジャズスタンダード集である。
 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンが『アルト・メモリーズ』でトリビュートしたのは,マイルス・デイビスではなくアルトサックスの巨匠たちである。

 チャーリー・パーカーオリヴァー・ネルソンキャノンボール・アダレイジジ・クライスジャッキー・マクリーンオーネット・コールマンベニー・カータージョニー・ホッジズの名曲を,はみ出すことなく渋目の演奏でまとめ上げたアルバムである。

 それにしてもたまたまなのかどうなのか? 「これぞ,ツインアルト」と思わせるような演奏が1曲もない。ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンが同時に音を鳴らす場面が極端に少ない。アルト2本のバトルがほんとんどないのが個人的に不満である。

 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンが入れ替わりの交代形式でアルトソロを受け渡している。そこに2人の個性の違いを聴き分けることができるのは楽しいのだが,ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンってこんなにも似ていたっけ?

 ズバリ『アルト・メモリーズ』は「これぞ,ツインアルト」というよりも「これぞ,ツインテナー」の音であり,2人ともジョン・コルトレーンっぽいし,ケニー・ジャレットっぽくもあるし…。

 ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンソロ・アルバムは1枚も聴いたことがないせいなのだろうし,逆にマイルス・デイビスジョン・コルトレーンケニー・ジャレットの演奏を今でも聴き続けているせいなのだろうし…。

 『アルト・メモリーズ』のハイライトは【LONLY WOMAN】である。この1曲でそれまでの穏やかな雰囲気をガラリと変えるオーネット・コールマンの破壊力。
 本当はなれるものならジョン・コルトレーンではなくオーネット・コールマンを真似したかったのでは? ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンの2人の手に届いたのがジョン・コルトレーンだったというだけで,制覇してきたチャーリー・パーカーオリヴァー・ネルソンキャノンボール・アダレイジジ・クライスジャッキー・マクリーンベニー・カータージョニー・ホッジズの発表会!?

ALTO MEMORIES-2 管理人の結論。『アルト・メモリーズ批評

 『アルト・メモリーズ』のリーダーはゲイリー・バーツでありソニー・フォーチュンはゲストである。
 『アルト・メモリーズ』のリーダーはソニー・フォーチュンでありゲイリー・バーツはゲストである。 

 『アルト・メモリーズ』のリーダーは常に2人ではなくどちらか1人。共同名義でケニー・バロンピアノを,バスター・ウィリアムスベースを,ジャック・デジョネットドラムをレンタルして乗り回している感じ。

 そう。『アルト・メモリーズ』とはゲイリー・バーツカルテットソニー・フォーチュンカルテットの「対バン」盤。
 似た者同士のアルトなのにテナーっぽい,ゲイリー・バーツソニー・フォーチュンの合同事務所においでやす。

  01. STOLEN MOMENTS
  02. U.F.O.
  03. JEANNINE
  04. MINORITY
  05. BILLIE'S BOUNCE
  06. EMBRACEABLE YOU
  07. CAPUCHIN SWING
  08. LONELY WOMAN
  09. WHEN LIGHTS ARE LOW
  10. WARM VALLEY

(ヴァーヴ/VERVE 1994年発売/POCJ-1212)
(ライナーノーツ/ロブ・クロッカー)

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