EARTHGLOW-1 随分と久しぶりに「貴公子」デビッド・ベノワの新作を聴いてみた。いつも通りの「安定のスムーズ・ジャズ」を期待して購入した。『EARTHGLOW』(以下『アースグロウ』)である。

 いきなりボサノヴァ調の【BOTSWANA BOSSA NOVA】で始まり【WILL’S CHILL】もラテン調。アレレ?もしかして?
 いつものデビッド・ベノワの雰囲気とは違う,流行りのクラブ・ジャズ・アルバムかと思いきや,3曲目以降は「これぞ2010年代のスムーズ・ジャズ!」が進行していく。
 どれもこれもが“デビッド・ベノワ印”のスムーズ・ジャズが百花繚乱!

 【UNBELIEVABLE】【SNEAKY AS A CAT】ではリック・ブラウントランペットを,【STRAIGHTAWAY】ではジェフ・カシワサックスを迎えて,スムーズ系らしいシルキーな雰囲気でまとめている。

 個人的には“リリカルな”【EASY DAY】【BROWN’S GONE】あたりに,デビッド・ベノワのDNAとかデビッド・ベノワの真骨頂が感じられて聴き惚れてしまう。

 フュージョン系のピアニストには,作曲家タイプとピアニスト・タイプとの二種類の方向性があるが『アースグロウ』を聴いてみて,デビッド・ベノワピアニストである前にやはり作曲家であって,彼の頭の中では「オーケストラが鳴っている系」の人だと思ってしまった。

EARTHGLOW-2 実は『アースグロウ』の購入動機は,流行りのクラブ・ジャズ目的ではなく,2つの別アレンジが最高な【FREEDOM AT MIDNIGHT】。

 今更ながらの感じもするが,デビッド・ベノワの中で「これだっ!」という閃きがあったのでしょう。20年間も演奏してきたデビッド・ベノワ最大の人気曲で代表曲。恐らくは「満を持しての」再演であろう。

 緻密なアレンジを繰り返してのリアレンジなのに,こんなにも生き生きとした【FREEDOM AT MIDNIGHT】を聴いていると,一向に歳を取らない若手のようであり,歳を重ねた紳士のようでもある。

  01. BOTSWANA BOSSA NOVA
  02. WILL'S CHILL
  03. UNBELIEVABLE
  04. EASY DAY
  05. STRAIGHTAWAY
  06. NEW CREATION
  07. EARTHGLOW
  08. SNEAKY AS A CAT
  09. DOWNTIME
  10. BROWNIE'S GONE
  11. FREEDOM AT MIDNIGHT (THE SCHROEDER VARIATIONS)
  12. FREEDOM AT MIDNIGHT (THEME AND VARIATIONS)

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2010年発売/UCCT-1220)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/松下佳男)

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