野獣王国LIVE-1 檻の中(スタジオ録音)で飼われた野獣王国の音楽とは,観賞用なのだから,まぁ,大人しい。本当の野獣王国の音楽とは檻の外(LIVE)にある。
 飼いならされてなどいない,野生の本能が爆発するのは絶対にLIVEの方である。『野獣王国LIVE』である。

 野獣王国のアルバムは『POWER JUNGLE』『SWEET & THE BEAST』と聴いてきて,この2枚で十分に“野獣らしさ”を感じてはいたが,それってほんのさわりにすぎなかった。
 
 『POWER JUNGLE』『SWEET & THE BEAST』はメジャーである。メジャーの宿命とはセールスである。そのためには(一般向けかコアなファン向けかに違いはあろうが)変な縛りを課せられて,檻の中でこじんまりと演奏する部分がどうしてもゼロではないと思う。

 対して『野獣王国LIVE』とはインディーズである。こちらは自由度が高い。レコード会社からの変な縛りがない。加えて『野獣王国LIVE』はライブ盤である。メジャーならカットされる脱線に次ぐ脱線の部分がインディーズゆえに丸々収録されている。『野獣王国LIVE』がCD2枚組としてアルバム化されたのは,レコード会社の力を受け付けない,野獣王国メンバー4人の意志の賜物なのである。

 1曲毎に解説を書き連ねたくなる12曲の大名演。それぞれの作者の作風が伝わって来るし,カヴァー曲のアレンジはお見事だし,やっぱり【DIMENSION TRAVELER】の大盛り上がりに尽きる!

 いいや,やっぱり&やっぱり『野獣王国LIVE』のハイライトは,鳴瀬善博ベース・ソロ東原力哉ドラム・ソロの長尺に尽きる。
 檻の何倍もの大きさがある箱の中(ライブ会場)を,ナルチョが駆けずり回って盛り上げれば,東原力哉が大立ち回りで盛り上げる〜。

野獣王国LIVE-2 そう。野獣王国のエサとは,自分たちの音楽を心から愛してくれる熱烈なファンたちの存在であるが,野獣王国の大好物とは,自分たちの音楽を心から愛してくれる熱烈なファンたちの大声援である。
 フロントの是方博邦もガバガバで難波弘之がウハウハである。野獣王国の全員の魂が黄色い?声援に射抜かれている。

 ファンとしては,野生の本能に忠実に演奏された野獣王国が聴けるだけで大満足。『野獣王国LIVE』の満足度はアフリカン・サファリ10回分以上である。

    disc-1
  01. GOLD RUSH
  02. Z-PARADISE
  03. DIMENSION TRAVELER
  04. TEARS OF MERMAID
  05. ペンギンの初恋
  06. PURPLE SAURUS

    disc-2
  01. 哀愁のクジラ
  02. 鉄腕アトム
  03. スパイ大作戦
  04. 日本の心 春夏秋冬
  05. NOW OR NEVER
  06. LAST BLUES

(クリンク・レコード/CLINCK RECORDS 1997年発売/CRCD5018-19)
(紙ジャケット仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/福原武志)

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