
そう。巷で語られている通りデビュー当時のゲイリー・バートンの音楽性は,ヒッピーたちに熱狂的に支持されていたチャールス・ロイドのライン上にある「ジャズ・ロック・スター」なゲイリー・バートンが『ダスター』にいる。
ただし,その後のゲイリー・バートンのディスコグラフィーを追いかけていくと『ダスター』だけが外れているわけではない。『ダスター』も確実にゲイリー・バートンのジャズ・ラインで繋がっている。
管理人が「ジャズ・ロック・スター」なゲイリー・バートンに違和感を覚えないのは“ジャズ・ピアニスト”ばりにゲイリー・バートンがヴァイヴの音階を弾いているから!
もっと言えば,あんなにもチック・コリアとシンクロできる理由はここにあったのかっ,と1人ニヤツイテみたりして…。
ここでゲイリー・バートンの「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」としての特徴を記すと,ゲイリー・バートンはヴァイヴという楽器を打楽器としてではなくメロディー楽器として扱っている。
例えば,ミルト・ジャクソンのようなタイプは,ヴィブラフォンという楽器以前に「タメ」と「ノリ」で聴かせようとする。ヴィブラフォンを打楽器の延長線上で演奏している。
しかし,ゲイリー・バートンと来れば「4本マレット奏法」である。4つのマレットを同時に音板に叩きおろすことによりヴィブラフォンをピアノのような和音楽器として捉えている。要はピアニスト・サイドからのアプローチ!
これが「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」ゲイリー・バートンの「栄光の架け橋」なのだと思っている。
そんなピアニスト寄りのヴィブラフォン奏者=ゲイリー・バートンがジャズ・ロックに魂を売った『ダスター』であるが,ベースのスティーヴ・スワロウとドラムのロイ・ヘインズがしっかりとジャズのビートをキープしているおかげで「毒蛾」の入った変わり種ジャズとしても十分に楽しめる。
スティーヴ・スワロウのベースは今聴くと,ウェザー・リポート在籍時のミロスラフ・ヴィトウスっぽいと思うし,ロイ・ヘインズのドラミングは今聴くと,チック・コリアの『ナウ・ヒー・ソングス・ナウ・ヒー・ソブス』っぽい。

『ダスター』のハイライトは,8ビートの大メジャーなPOPチューンの【モジョ将軍の戦略】とフィードバック奏法によるロック・チューンの【ワン・トゥ・1−2−3−4】の2曲にある。この2曲が連続して流れる11分間だけは変革期を迎えたジャズの新しい息吹を感じる。
新しいジャズの形というビジョンを思い描いていた4人の若手ミュージシャンのエネルギーと勢いが,時代に関係なく今でも聴く者に「新しさ」をもたらしている。この2曲だけは今でも大大好き〜!
先に書いた『ダスター』の非異色論は,残る6曲の平凡なジャズの印象から来ているが,根底に流れるスピリッツはロックのフィーリングそのもの。
ラリー・コリエルの最良の部分を引き出しつつ,本気でロック方面で行くのならドラマーはトニー・ウイリアムスという選択肢もあったのだろうに,王道のロイ・ヘインズを選んだゲイリー・バートンの高度な受容性が,後の「なんとなく,クリスタル」〜。
01. Ballet
02. Sweet Rain
03. Portsmouth Figurations
04. General Mojo's Well Laid Plan
05. One, Two, 1-2-3-4
06. Sing Me Softly of the Blues
07. Liturgy
08. Response
(RCA/RCA 1967年発売/BVCJ-37359)
(ライナーノーツ/村井康司)
(ライナーノーツ/村井康司)