「アドリブログ」のルーティーンとして「1アーティスト1枚」のルールで執筆しているが,最近はマイ・ルールに縛られずに,自分の好きなジャズメンをたくさん取り上げたいという欲求が募っている。
つまりキース・ジャレットとパット・メセニーの素晴らしさについて,ブログでもっと宣伝したい,という気持ちがある。
でっ,キース・ジャレットについては2007年のお正月にUPしたので,2008年のお正月にはキース・ジャレット・トリオの原型となったゲイリー・ピーコック名義のトリオを隠れ蓑的に取り上げてみた。
ソロ,トリオと来たので2009年のお正月はデュエットである。それも「1アーティスト1枚」縛りを崩さないためにもキース・ジャレットの名前が後ろに来るゲイリー・バートンとのデュオ『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(以下『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』)を選んでみた。
ゲイリー・バートンとのデュオといっても正確にはデュオではなく,ギターのサム・ブラウン,ベースのスティーヴ・スワロー,ドラムのビル・グッドウィンが在籍するゲイリー・バートンのレギュラー・バンドのゲスト・プレイヤーとしての共演なのだが,そこをデュオと書かせる辺りがキース・ジャレットの「大物」の証し!
さて,ゲイリー・バートン&キース・ジャレット名義の『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』)が1971年。チック・コリア&ゲイリー・バートン名義の『クリスタル・サイレンス』が1973年。
そう。1973年の時点では名前がゲイリー・バートンより先に出ているチック・コリアの方がキース・ジャレットより格上であった。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』と『クリスタル・サイレンス』を聴き比べてみると,チック・コリア優位,は明白である。
そう。キース・ジャレット命の管理人をして,若き日のキース・ジャレットには現在でも愛聴に値する演奏は多くはない。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』もそれなりの(普通の出来の)演奏集である。
『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』レコーディング当時のキース・ジャレットの活動は,かの「電化マイルス」のバンドに在籍しつつ,チャーリー・ヘイデン&ポール・モチアンと組んだピアノ・トリオで,ロックやカントリーやアメリカン・ポップスを上手に消化した「ジャズ・ロック」期に当たる。
つまりゲイリー・バートンとしては,既に出来上がっていたバンド・サウンドに意気投合できるピアニストを迎えて音を分厚くしたかっただけ,マイルス・バンドのキース・ジャレットのお手並みを拝見してみたかっただけ,だったように思えてならない。完全にゲイリー・バートンの“興味本位”というのがキース・ジャレットとの共演理由で間違いない。
キース・ジャレット側も同様であって,キース・ジャレットがギタリストと共演したアルバムはマイルス・バンド以外では『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』のみである。こらはギターとの共演に面白さを感じなかったということか?
惜しむべきは,仮に『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』のギタリストがサム・ブラウンではなくパット・メセニーであったなら,キース・ジャレットとギタリストとの共演アルバムが増えたように思うのだが…。
そんな“興味本位”のレコーディングにも関わらず,この点がゲイリー・バートンの本当の凄さなのだと思うのだが,一度の音合わせをしただけで,まだ駆け出しのキース・ジャレットの才能を見抜いてしまった。
特にコンポーザーとしてのキース・ジャレットの才能を見定めてしまった。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』で全5曲中4曲もキース・ジャレットのオリジナルを採用している。ゲイリー・バートン自身も名曲を数多く書き上げてきたソングライターだというのに…。
ズバリ『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』の真実とは『ゲイリー・バートン・フィーチャリング・キース・ジャレット』である。
ゲイリー・バートンがキース・ジャレットに「花を持たせた」アルバムなのである。その後のキース・ジャレットの“花道街道”を祝福するかのように…。
『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』で,ゲイリー・バートンがキース・ジャレットへ託した「裁量権」が,その後のゲイリー・バートン自身の音楽的な成功に影響を及ぼしている。
それが【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の誕生である。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」での超名演『アローン・アット・ラスト』はキース・ジャレットとの共演なしには実現しなかったと思うし【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の演奏なしにはグラミー受賞はなかったと思っている。
ゲイリー・バートンについて語るなら,パット・メセニー,チック・コリア,小曽根真との共演歴について語らないわけにはいかないが,個人的にはキース・ジャレットとの出会いについても大々的に語られるべきだと思っている。
そうなればその会話の結論は,ゲイリー・バートンの“音楽眼”が最高に素晴らしい!
『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットの音楽とは,ジャズとは言ってもカントリーでフォークでゴスペルチックでアーシーなノリで突っ走るマイルス・バンドの鍵盤奏者にふさわしい音楽の演奏者にすぎなかった。
代名詞となるソロ・ピアノはまだだったし,アメリカン・カルテットもヨーロピアン・カルテットもスタンダーズ・トリオも当然手付かずの若手有望株の1人にすぎなかったという事実。
管理人は思う。ゲイリー・バートンは“未完成の”キース・ジャレットの中に,一体何を見い出したのだろう。直接,本人に尋ねてみたい。これが叶えば「お年玉」かなぁ。
「キース・ジャレット批評」が読者の皆さんへの遅い「お年玉」となりますように…。
01. GROW YOUR OWN
02. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
03. COMO EN VIETNAM
04. FORTUNE SMILES
05. THE RAVEN SPEAKS
GARY BURTON : Vibes
KEITH JARRETT : Piano, Electric Piano, Soprano Saxophone
SAM BROWN : Guitar
STEVE SWALLOW : Bass
BILL GOODWIN : Drums
モーセの第三の講話(申27:1-28:68)
赤木りえ 『少女の頃』
つまりキース・ジャレットとパット・メセニーの素晴らしさについて,ブログでもっと宣伝したい,という気持ちがある。
でっ,キース・ジャレットについては2007年のお正月にUPしたので,2008年のお正月にはキース・ジャレット・トリオの原型となったゲイリー・ピーコック名義のトリオを隠れ蓑的に取り上げてみた。
ソロ,トリオと来たので2009年のお正月はデュエットである。それも「1アーティスト1枚」縛りを崩さないためにもキース・ジャレットの名前が後ろに来るゲイリー・バートンとのデュオ『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(以下『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』)を選んでみた。
ゲイリー・バートンとのデュオといっても正確にはデュオではなく,ギターのサム・ブラウン,ベースのスティーヴ・スワロー,ドラムのビル・グッドウィンが在籍するゲイリー・バートンのレギュラー・バンドのゲスト・プレイヤーとしての共演なのだが,そこをデュオと書かせる辺りがキース・ジャレットの「大物」の証し!
さて,ゲイリー・バートン&キース・ジャレット名義の『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』)が1971年。チック・コリア&ゲイリー・バートン名義の『クリスタル・サイレンス』が1973年。
そう。1973年の時点では名前がゲイリー・バートンより先に出ているチック・コリアの方がキース・ジャレットより格上であった。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』と『クリスタル・サイレンス』を聴き比べてみると,チック・コリア優位,は明白である。
そう。キース・ジャレット命の管理人をして,若き日のキース・ジャレットには現在でも愛聴に値する演奏は多くはない。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』もそれなりの(普通の出来の)演奏集である。
『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』レコーディング当時のキース・ジャレットの活動は,かの「電化マイルス」のバンドに在籍しつつ,チャーリー・ヘイデン&ポール・モチアンと組んだピアノ・トリオで,ロックやカントリーやアメリカン・ポップスを上手に消化した「ジャズ・ロック」期に当たる。
つまりゲイリー・バートンとしては,既に出来上がっていたバンド・サウンドに意気投合できるピアニストを迎えて音を分厚くしたかっただけ,マイルス・バンドのキース・ジャレットのお手並みを拝見してみたかっただけ,だったように思えてならない。完全にゲイリー・バートンの“興味本位”というのがキース・ジャレットとの共演理由で間違いない。
キース・ジャレット側も同様であって,キース・ジャレットがギタリストと共演したアルバムはマイルス・バンド以外では『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』のみである。こらはギターとの共演に面白さを感じなかったということか?
惜しむべきは,仮に『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』のギタリストがサム・ブラウンではなくパット・メセニーであったなら,キース・ジャレットとギタリストとの共演アルバムが増えたように思うのだが…。
そんな“興味本位”のレコーディングにも関わらず,この点がゲイリー・バートンの本当の凄さなのだと思うのだが,一度の音合わせをしただけで,まだ駆け出しのキース・ジャレットの才能を見抜いてしまった。
特にコンポーザーとしてのキース・ジャレットの才能を見定めてしまった。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』で全5曲中4曲もキース・ジャレットのオリジナルを採用している。ゲイリー・バートン自身も名曲を数多く書き上げてきたソングライターだというのに…。
ズバリ『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』の真実とは『ゲイリー・バートン・フィーチャリング・キース・ジャレット』である。
ゲイリー・バートンがキース・ジャレットに「花を持たせた」アルバムなのである。その後のキース・ジャレットの“花道街道”を祝福するかのように…。
『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』で,ゲイリー・バートンがキース・ジャレットへ託した「裁量権」が,その後のゲイリー・バートン自身の音楽的な成功に影響を及ぼしている。
それが【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の誕生である。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」での超名演『アローン・アット・ラスト』はキース・ジャレットとの共演なしには実現しなかったと思うし【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の演奏なしにはグラミー受賞はなかったと思っている。
ゲイリー・バートンについて語るなら,パット・メセニー,チック・コリア,小曽根真との共演歴について語らないわけにはいかないが,個人的にはキース・ジャレットとの出会いについても大々的に語られるべきだと思っている。
そうなればその会話の結論は,ゲイリー・バートンの“音楽眼”が最高に素晴らしい!
『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットの音楽とは,ジャズとは言ってもカントリーでフォークでゴスペルチックでアーシーなノリで突っ走るマイルス・バンドの鍵盤奏者にふさわしい音楽の演奏者にすぎなかった。
代名詞となるソロ・ピアノはまだだったし,アメリカン・カルテットもヨーロピアン・カルテットもスタンダーズ・トリオも当然手付かずの若手有望株の1人にすぎなかったという事実。
管理人は思う。ゲイリー・バートンは“未完成の”キース・ジャレットの中に,一体何を見い出したのだろう。直接,本人に尋ねてみたい。これが叶えば「お年玉」かなぁ。
「キース・ジャレット批評」が読者の皆さんへの遅い「お年玉」となりますように…。
01. GROW YOUR OWN
02. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
03. COMO EN VIETNAM
04. FORTUNE SMILES
05. THE RAVEN SPEAKS
GARY BURTON : Vibes
KEITH JARRETT : Piano, Electric Piano, Soprano Saxophone
SAM BROWN : Guitar
STEVE SWALLOW : Bass
BILL GOODWIN : Drums
(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
モーセの第三の講話(申27:1-28:68)
赤木りえ 『少女の頃』