
『アローン・アット・ラスト』とは,LPのA面がモントルー・ジャズ・フェスティバルにおける圧巻のソロ・パーフォーマンス。B面がこちらも“マルチ鍵盤奏者”ゲイリー・バートンとしての圧巻の一人多重録音によるカップリング盤。
最初は完全にモントルー・ジャズ・フェスティバルのライブ録音にKOされた口。A面はライブ盤だと知らずに聴き始めて「いい演奏だな」と余韻に浸っていると,直後の割れんばかりの大喝采! 大袈裟でも何でもなく「えっ,ええ〜!」と,脳天はかち割られるは,腰を抜かしそうになるはの大衝撃! 何この音楽&何こんなジャズ!
B面も一人多重録音盤だと知らずに聴き始めて,ピアノやオルガンの音色が聴こえてきて「あぁ,誰かとのデュエットなのか」と思ってしまうくらい,本職顔負けのゲイリー・バートンの「一人“鍵盤群”多重録音」に魅了されてしまった。そうして聴けば聴く程好きになってしまった。
『アローン・アット・ラスト』は曲順が進む程に“アガル”1枚である。当初はキース・ジャレットの【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】が大好きで1曲目ばかり聴き,1曲目だけを聴くためのアルバムであったのだが,次第にライブ録音の3曲を続けて聴きたくなった。そうして4曲目以降も聴くようになり,オオラスの【CHENGA DE SAUDADE(NO MORE BLUES)】にシビレルようになっていった。
ゲイリー・バートンのハイテクニックがアクロバティックだけど最高にクールなヴィブラフォン。今にもくずれそうな氷細工のごとき繊細な表現がおとぎの国の耽美的なヴィブラフォン。
どうしても室内楽的なヴィブラフォンの音色に引っ張られてしまうが,よく聴くと音数も多いしスイングしている。
HOTな熱量で叩かれるCOOLなヴィブラフォンが最高だ! これぞジャズの醍醐味インプロヴィゼーション!
『アローン・アット・ラスト』には,当時のゲイリー・バートンの「ジャズ・ロック」志向も見え隠れしている。
『アローン・アット・ラスト』におけるゲイリー・バートンの「温故知新」的なニュアンスの妙に「感動が次から次へと押し寄せて来る」秘訣が隠されていると思う。

ゲイリー・バートンは,そんじょそこらのジャズ・ジャイアンツとは格が違う。『アローン・アット・ラスト』での「決定的な名演」に酔わないジャズ・ファンなど一人もいない。
01. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
02. GREEN MOUNTAINS/ARISE, HER EYES
03. THE SUNSET BELL
04. HAND BAGS AND GLAD RAGS
05. HULLO, BOLINAS
06. GENERAL MOJO'S WELL LAID PLAN
07. CHENGA DE SAUDADE (NO MORE BLUES)
(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/WPCR-27085)
(ライナーノーツ/後藤誠)
(ライナーノーツ/後藤誠)