
尤も加藤崇之が前面に出ているわけではない。きちんと片山広明と林栄一のフォロー役へと回っている。
それでいて,片山広明と林栄一の2本のサックスを拝聴しているつもりが,いつしか加藤崇之のギターばかりを耳で追いかけている自分に気付く…。こういう演奏が大好物なのです!
こんなにも素晴らしいジャズ・ギタリストが世間に知られずに眠っているのだから,J−ジャズの未来はまだまだ安泰である。
そのためにも「J−ジャズ史上最高のフリー・ジャズ・バンド」として讃えられる「CO2」はもっと売れないといけない。すでに解散した今であっても,片山広明が亡くなった今でも売れ続けなければならない。
CO2のライブ盤『TOKAI』を聴いていると,もっと大勢の人に「CO2」を聴いてほしい,という衝動に駆られてしまう…。
『TOKAI』とは東海村のことだそうだ。JOCの核燃料加工施設で臨界事故が発生したあの東海村。福島第一原発事故はまだだったから,高沸点のジャズとして“臨界事故”をもじったのだろう。
まだ東海村がジョークとして通用した時代に,意図せずに臨界を迎えた5人の沸点のライブ盤に『TOKAI』というタイトルはふさわしいと思っていたものだ。今となっては反省の毎日。新型コロナウイルス。大流行にならないことを願っているが,隙の甘い生活を送る毎日。
どんなメロディーであっても,跡形もなく崩しながら実に見事に歌い上げるツイン・サックス。この演奏は美しいのではなくパワー勝負のサックスであって,超高速なのに一音一音をビジビジと,あたかもドラムのように叩きつけて来る。物凄いド迫力。そして「NO」だと思っていても「YES」と強引に言わされそうな説得力。
読者の皆さん,これが片山広明なのである。これが林栄一なのである。
ベースの早川岳晴とドラムの芳垣安洋によるリズム隊がこれまたイカレテいる。爆音で暴れまくる2人のリズム・チェンジが最高のCOOLなので,1つの棒状の固まりがぐいぐいと押し出され,やがて渦のうねりの如く,強制的に開かされた喉の奥までズシズシと打ち込まれる感じ?
そんな最高のフロントと最高のリズムをつなぐのが,縦横無尽に形を変えては顔を出す,加藤崇之の“七色ギター”である。
“七色ギター”=レインボーなわけだが「CO2」はピアノレスという編成上,加藤崇之のギター・シンセサイザーがキーボード3台分の大立ち回り!

楽器だけではなく「犬の遠吠え」を加工した七色の音色だけも十分い個性的であるが,特に合いの手の入れ方が絶妙で「加藤節」あっての「CO2」のオリジナリティーを強く感じてしまう。
とにもかくにも『TOKAI』とは,バンド内では5番手であろう加藤崇之の下剋上ライブ!
フリー・ジャズの名手4人が揃いにそろって加藤崇之に喰われている。ジャズの醍醐味とは,特にライブの醍醐味とは「やった者勝ち」なのである。
01. monday night
02. unite
03. blade runner
04. tattata
05. tejinshi no rumba
06. hallelujah
(スタジオ・ウィー/STUDIO WEE 2000年発売/SW-203)
(紙ジャケット仕様)
(紙ジャケット仕様)
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