
バークレー音楽院を卒業した渡辺貞夫が最初にツアーに参加したのが,ゲイリー・マクファーランドのバンドだったのは有名なお話。ハード・バップかフリー・ジャズで腕試しをするしかない,ゴリゴリのジャズメンだったナベサダが,ブラジル音楽,ボサノヴァ,ポップなソフト・ジャズに開眼したのは,ゲイリー・マクファーランドのミュージシャンシップに惚れてしまったからだそうで,渡辺貞夫が日本にジャズメンとして初めてボサノヴァを持ち帰るきっかけとなった。
こんなエピソードを聞いてしまえば,ナベサダ・フリーク足る者,渡辺貞夫が最初にツアーに参加した元ネタを聞いてみたいと思うもの。渡辺貞夫を魅了したゲイリー・マクファーランドのミュージシャンシップに触れてみたいと思うもの。
渡辺貞夫が参加したのは『SOFT SAMBA』(以下『ソフト・サンバ』)のフォロー・ツアー。『ソフト・サンバ』の一体どこに渡辺貞夫は魅了されたのか?
ブラジル音楽と来れば,やはり独特のリズムと考えがちだが『ソフト・サンバ』はビートルズでありポップスであり映画音楽集。
当時の渡辺貞夫は,やれ,ビ・バップだ,やれ,アドリブだ,といきがっていたはず。そんな渡辺貞夫を『ソフト・サンバ』の有名美メロとゲイリー・マクファーランドの涼しいヴィブラフォンが癒してくれたのだろう。
そう。『ソフト・サンバ』の真の魅力は「脱力ジャズ」!
個人的には腑抜けだし,ぬるいし,だるいしのラウンジ系だから『ソフト・サンバ』はアルバムの最後までは聴き通せない。いつも途中で飽きてくるのだが,そんな時に【AND I LOVE HER】と【EMILY】がちょうどいい曲順に配置されている。この2曲でテンションが上がっての完走である。

普段はゲイリー・マクファーランドなんてほとんど聴かないのだが,年に一度ぐらいはどうしても聴きたくなる夜がある。表面上はソフトなサンバだが,どうしてどうして…。
ゲイリー・マクファーランドのハートは,ゴリゴリのジャズメンと同じなのである…。
ゲイリー・マクファーランドは,同じくボサノヴァでヒットを飛ばしたスタン・ゲッツと同じ人種なのである…。
01. RINGO
02. FROM RUSSIA WITH LOVE
03. SHE LOVES YOU
04. A HARD DAY'S NIGHT
05. THE GOOD LIFE
06. MORE
07. AND I LOVE HER
08. THE LOVE GODDNESS
09. I WANT TO HOLD YOUR HAND
10. EMILY
11. CALIFORNIA, HERE I COME
12. LA VIE EN ROSE
(ヴァーヴ/VERVE 1965年発売/UCCU-5249)
(ライナーノーツ/都並清史,植木文明)
(ライナーノーツ/都並清史,植木文明)
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