
『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の国内盤のリリース1つ前のアルバムは『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』。順番からいけば“あの”『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』の後なのだから『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』は落ちるはずだ。
それがどうだろう。『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』がこれまた最高だ。デビュー当時の「純ジャズなピアノ・トリオ」である。原点回帰盤として受け入れることができる。
つまり「e.s.t.」とは『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の時点で,すでに完成されたピアノ・トリオであったということ。
「e.s.t.」は初めから完成している状態でスタートし,完成体を中核に置きながら,全く異なる新しい音楽へと,全方向へと拡散し,変貌していったピアノ・トリオだったということ。
ピアノのエスビョルン・スヴェンソンがすでにキース・ジャレットしているし,ベースのダン・ベルグルンドがすでにゲイリー・ピーコックしているし,ドラムのマグヌス・オストラムがすでにジャック・デジョネット改めポール・モチアンしている。
デビュー当時の「e.s.t.」の音楽性は,キース・ジャレット・トリオのそれであった。内省的で実にいい音楽を鳴らしている。
『ホエン・エヴリワン・ハズ・ゴーン』の最高を聴き終えて,ふと考えたのはエスビョルン・スヴェンソンの「迷い」である。
まだエスビョルン・スヴェンソンも若者だったのだから,自分の将来について,あれやこれやと迷って当然。『フロム・ガガーリンズ・ポイント・オブ・ヴュー』以降の「モデル・チェンジ」があったからこそ『セヴン・デイズ・オブ・フォーリング』まで辿り着くことができた。
管理人が“引っ掛かった”のは【WHEN EVERYONE HAS GONE】の存在である。
『ヴァイアティカム』の【VIATICUM】ってどこかで聞いたか?と考えた時【WHEN EVERYONE HAS GONE】の存在に気付いた。
そう。【VIATICUM】とは【WHEN EVERYONE HAS GONE】の焼き直しだったのだ。

その「別の道」を歩み続けていたと仮定した結果が“最高傑作”『ヴァイアティカム』の【VIATICUM】で提示されていたことに気付いた。
【WHEN EVERYONE HAS GONE】を元ネタとして【VIATICUM】を再び演奏することに決めたエスビョルン・スヴェンソンの心の内とは如何ばかりだろう…。
管理人は「e.s.t.」であろうと「エスビョルン・スヴェンソン・トリオ」であろうと,ジャズであろうとポップスであろうと,アコースティックであろうとエレクトリックであろうと,または他のどんな一面を見せるとしても,エスビョルン・スヴェンソンの創造する音楽に付いて行きます。もはや叶わぬ夢だけど…。
とにかくデビュー当時の「純ジャズなピアノ・トリオ」=「エスビョルン・スヴェンソン・トリオ」も素晴らしい。
01. WHEN EVERYONE HAS GONE
02. FINGERTRIP
03. FREE FOUR
04. STELLA BY STARLIGHT
05. 4 am
06. MOHAMMED GOES TO NEW YORK part 1
07. MOHAMMED GOES TO NEW YORK part 2
08. WALTZ FOR THE LONELY ONES
09. SILLY WALK
10. TOUGH TOUGH
11. HANDS OFF
(ドラゴン/DRAGON 1993年発売/DIW-480)
(ライナーノーツ/瀧口譲司)
(ライナーノーツ/瀧口譲司)