COOL-1 ボブ・ジェームス最大の「問題作」と書くと語弊があるよなぁ。言葉を選ぶと「衝撃作」と表現した方がピッタリくる。そんな「衝撃作」が『COOL』(以下『クール』)である。

 何が「衝撃」だったのか? ここは黙って『FOURPLAY』に続けて『クール』を聴いてみてください。これが今や「伝説」である『FOURPLAY』の次にボブ・ジェームスが作り上げた音楽なのか〜,とブッタマゲルはずである。

 『クール』のドラマーハービー・メイソンのままだから尚更「衝撃」を感じてしまう。ギターリー・リトナーからアール・クルーに変わっただけで,こんなにもボブ・ジェームスの音楽が変わるなんて〜。
 それも快心作の『FOURPLAY』をバッサリと捨て,アール・クルーとの「懐古趣味」に走るなんて〜。

 どう考えても『クール』のリリースの意味が理解できなかった。ボブ・ジェームスも好き。アール・クルーも好き。『クール』が悪いはずもない。
 しかし時代はバブルである。『FOURPLAY』はバブリーな音がする。一方の『クール』はチープな音が売りである。アール・クルーの「爪弾き+ナイロン・ストリングス」が素朴すぎて,バブルの時は正直,居心地が良くなかった。
 テンションが上げるどころか,聞けば聞くほどに“COOL DOWN”。だからタイトルが『クール』なのだろう。「時代の熱を冷ます」音楽が必要とされていたのだろう。

 そう。管理人は『クール』を購入した当時はほとんど聴かなかった。『クール』を聴くようになったのは30歳を過ぎてから,つまり若者ではなくなったという自覚を抱いた頃からである。30歳を過ぎてからジワジワと身体の深い部分に浸透してきた音楽の1枚である。

 実は『クール』は「COOL」ではない。妙にテンションの高い演奏が続いている。なのに聴いているリスナーは徐々に意識が遠のいていく…。
 そう。実はボブ・ジェームスが『クール』で演っていることは,基本的に『FOURPLAY』と同じ。『FOURPLAY』の続編としての『クール』に違和感はないのだった。

 ここまで来ると後は一気! リー・リトナーの個性とアール・クルーの個性の違いを,そしてその2人に合わせるボブ・ジェームスのメロディー・ラインと音楽構造の違いを楽しむだけ!

COOL-2 ボブ・ジェームス自身がリー・リトナーの個性とアール・クルーの個性の違いを楽しんでいる。両方どちらも優劣なしに楽しんでいる。間違いない。
 しか〜し『クール』でのアール・クルーの“味”を一番楽しんでいるのはハービー・メイソン! ハービー・メイソンがこんなにも前に出てドラムを叩いているのは『クール』以外に有りません。

 ははーん。ボブ・ジェームスさん。実は「懐古趣味」な『クール』での真の狙いは,リー・リトナーアール・クルーの個性の違いを表現することではなく,リー・リトナーアール・クルーと共演した時の「ハービー・メイソンの違い」を録音するのが目的だったりして…。

 ハービー・メイソンドラミングがとにかくカッコイイ! ハービー・メイソンの“味”を知ってしまったが最期,もう『クール』で寝落ちなど絶対にできなくなりますよっ。

 
01. Movin' On
02. As It hppens
03. So Much In Common
04. Fugitive Lite
05. The Night That Love Came Back
06. Secret Wishes
07. New York Samba
08. Handara
09. The Sponge
10. Terpsichore
11. San Diego Stomp
12. Miniature

 
EARL KLUGH : Guitars
BOB JAMES : Keyboards
HARVEY MASON : Drums
GARY KING : Bass
RON CARTER : Bass
LEONARD "DOC" GIBBS : Percussion
PAUL PESCO : Rhythm Guitar

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1992年発売/WPCP-4853)
(ライナーノーツ/上田力)

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