ECMのソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレット一連のソロ・ピアノが有名であるが,キース・ジャレットに先立つこと半年,レーベル・オーナー兼プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが最初に白羽の矢を当てたのは,キース・ジャレットではなくチック・コリアの方であった。
マンフレート・アイヒャーが「いの一番」でオファーしたのはチック・コリアであって,チック・コリアの成功があってのキース・ジャレットの大成功へと繋がる構図。
つまりソロ・ピアノにおけるマンフレート・アイヒャーの評価としては“天才”キース・ジャレットよりもチック・コリアの方が上だったということだ。
この評価はキース・ジャレット・マニアの管理人をして正しいのかもしれない。『PIANO IMPROVISATION VOL.2』(以下『チック・コリア・ソロ VOL.2』)におけるチック・コリアの煌めきが最高に素晴らしい。
今でこそソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレットの独壇場となっているが,管理人の評価ではドローである。
キース・ジャレットがチック・コリアより評価されている理由は単純に作品数の多さ,圧倒的なボリュームにある。加えてチック・コリアは多作家であり,興味を抱いたものに次々と手を出してはその全てを見事にまとめてくる。その点で自分の音楽人生の主軸をソロ・ピアノに捧げてきたキース・ジャレットとはソロ・ピアノへの評価が異なって当然であろう。
「長編小説」としてはキース・ジャレットの圧勝であるが「短編小説」としての破壊力ではチック・コリアに分があるように思う。
と言うのもキース・ジャレットの「短編小説」,例えば『FACING YOU』と『STAIRCASE』の美しさは,牧歌的でゴスペルチックでありつつも,毒である“電化マイルス”の大ヒーロー=キース・ジャレットまでも堪能できる良さがある。
対するチック・コリアのソロ・ピアノは,真にクリスタルな美しさが身体全身に満ちている。超絶な演奏テクニックと相まって高度にロマンティックな音楽がフリー・ジャズの文脈で置き換えられている。「その手があったか〜」な感じがするのだ。
そう。『PIANO IMPROVISATION』の『VOL.1』『VOL.2』を聴けば聴くほど,この全てが完全即興演奏とはにわかに信じられない。
どれもこれもがチック・コリアの「生命の息吹き」であり,新しいジャズ・ピアノの「創造」であった。
ECMのソロ・ピアノの何がそこまで素晴らしいのか? 一言で書けば「未完成」だから素晴らしい。
『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』の真実とは,チック・コリアの「デッサン集」である。
事実『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』に詰め込まれたアイディアの中から,後のチック・コリアの名盤群が発展した跡が残されている。
完全即興なのだから「デッサン集」で十分だし,発展途上の曲だからこそ,骨格が丸分かりだし,何をモチーフとしているかが感覚として近い。様々なアイディアが詰め込まれた「音の玉手箱(←古い)」だからこそ,オークションにかければ完成品以上の値打ちが付く。そんなアルバムだと思う。
それでこそチック・コリアである。チック・コリアの音楽は,いつでもスタイリッシュだし,目に見える部分で最高に美しい。絵画と表現するよりも写真と表現した方がしっくりくる。カメラとレンズを通して見るジャズ・ピアノの「ミニマルな新世界」なのだ。
管理人の結論。『チック・コリア・ソロ VOL.2』批評。
『チック・コリア・ソロ VOL.1』の1年後に発売された『チック・コリア・ソロ VOL.2』は『チック・コリア・ソロ VOL.1』の高評価を受けて制作された続編ではない。これ重要!
個人的に『チック・コリア・ソロ VOL.2』のアルバム名を耳にすれば,条件反射的に【AFTER NOON SONG】が頭の中で鳴り始めてしまう。
【AFTER NOON SONG】に関しては2つの解釈が可能である。1つは『チック・コリア・ソロ VOL.1』収録の【NOON SONG】の「次の」曲なのかもしれないし,単純に「午後の曲」という新曲パターン。管理人の予想では,本当は何の関連もないのに,ジョーク好きのチック・コリアの後付け【NOON SONG】→【AFTER NOON SONG】の出来上がりぃ!
『チック・コリア・ソロ VOL.1』にも【ホエア・アー・ユー・ナウ? 〜8つの絵の組曲】があったが『チック・コリア・ソロ VOL.2』にも【ア・ニュー・プレイス】という組曲がある。
この2つの組曲を聴いていると,後のキース・ジャレットの「短編小説」の原型のように思えてくる。チック・コリアとキース・ジャレット。後に2人で連弾をしたこともある仲。互いに互いのピアノが大好き。ソロ・ピアノの2大巨匠は相互に影響を及ぼしあっていた。
01. After Noon Song
02. Song For Lee Lee
03. Song For Thad
04. Trinkle Tinkle
05. Masqualero
06. Preparation 1
07. Preparation 2
08. Departure from Planet Earth
09. A New Place
1). Arrival
2). Scenery
3). Imps Walk
4). Rest
CHICK COREA : Piano
マンフレート・アイヒャーが「いの一番」でオファーしたのはチック・コリアであって,チック・コリアの成功があってのキース・ジャレットの大成功へと繋がる構図。
つまりソロ・ピアノにおけるマンフレート・アイヒャーの評価としては“天才”キース・ジャレットよりもチック・コリアの方が上だったということだ。
この評価はキース・ジャレット・マニアの管理人をして正しいのかもしれない。『PIANO IMPROVISATION VOL.2』(以下『チック・コリア・ソロ VOL.2』)におけるチック・コリアの煌めきが最高に素晴らしい。
今でこそソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレットの独壇場となっているが,管理人の評価ではドローである。
キース・ジャレットがチック・コリアより評価されている理由は単純に作品数の多さ,圧倒的なボリュームにある。加えてチック・コリアは多作家であり,興味を抱いたものに次々と手を出してはその全てを見事にまとめてくる。その点で自分の音楽人生の主軸をソロ・ピアノに捧げてきたキース・ジャレットとはソロ・ピアノへの評価が異なって当然であろう。
「長編小説」としてはキース・ジャレットの圧勝であるが「短編小説」としての破壊力ではチック・コリアに分があるように思う。
と言うのもキース・ジャレットの「短編小説」,例えば『FACING YOU』と『STAIRCASE』の美しさは,牧歌的でゴスペルチックでありつつも,毒である“電化マイルス”の大ヒーロー=キース・ジャレットまでも堪能できる良さがある。
対するチック・コリアのソロ・ピアノは,真にクリスタルな美しさが身体全身に満ちている。超絶な演奏テクニックと相まって高度にロマンティックな音楽がフリー・ジャズの文脈で置き換えられている。「その手があったか〜」な感じがするのだ。
そう。『PIANO IMPROVISATION』の『VOL.1』『VOL.2』を聴けば聴くほど,この全てが完全即興演奏とはにわかに信じられない。
どれもこれもがチック・コリアの「生命の息吹き」であり,新しいジャズ・ピアノの「創造」であった。
ECMのソロ・ピアノの何がそこまで素晴らしいのか? 一言で書けば「未完成」だから素晴らしい。
『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』の真実とは,チック・コリアの「デッサン集」である。
事実『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』に詰め込まれたアイディアの中から,後のチック・コリアの名盤群が発展した跡が残されている。
完全即興なのだから「デッサン集」で十分だし,発展途上の曲だからこそ,骨格が丸分かりだし,何をモチーフとしているかが感覚として近い。様々なアイディアが詰め込まれた「音の玉手箱(←古い)」だからこそ,オークションにかければ完成品以上の値打ちが付く。そんなアルバムだと思う。
それでこそチック・コリアである。チック・コリアの音楽は,いつでもスタイリッシュだし,目に見える部分で最高に美しい。絵画と表現するよりも写真と表現した方がしっくりくる。カメラとレンズを通して見るジャズ・ピアノの「ミニマルな新世界」なのだ。
管理人の結論。『チック・コリア・ソロ VOL.2』批評。
『チック・コリア・ソロ VOL.1』の1年後に発売された『チック・コリア・ソロ VOL.2』は『チック・コリア・ソロ VOL.1』の高評価を受けて制作された続編ではない。これ重要!
個人的に『チック・コリア・ソロ VOL.2』のアルバム名を耳にすれば,条件反射的に【AFTER NOON SONG】が頭の中で鳴り始めてしまう。
【AFTER NOON SONG】に関しては2つの解釈が可能である。1つは『チック・コリア・ソロ VOL.1』収録の【NOON SONG】の「次の」曲なのかもしれないし,単純に「午後の曲」という新曲パターン。管理人の予想では,本当は何の関連もないのに,ジョーク好きのチック・コリアの後付け【NOON SONG】→【AFTER NOON SONG】の出来上がりぃ!
『チック・コリア・ソロ VOL.1』にも【ホエア・アー・ユー・ナウ? 〜8つの絵の組曲】があったが『チック・コリア・ソロ VOL.2』にも【ア・ニュー・プレイス】という組曲がある。
この2つの組曲を聴いていると,後のキース・ジャレットの「短編小説」の原型のように思えてくる。チック・コリアとキース・ジャレット。後に2人で連弾をしたこともある仲。互いに互いのピアノが大好き。ソロ・ピアノの2大巨匠は相互に影響を及ぼしあっていた。
01. After Noon Song
02. Song For Lee Lee
03. Song For Thad
04. Trinkle Tinkle
05. Masqualero
06. Preparation 1
07. Preparation 2
08. Departure from Planet Earth
09. A New Place
1). Arrival
2). Scenery
3). Imps Walk
4). Rest
CHICK COREA : Piano
(ECM/ECM 1972年発売/POCJ-2017)
(ライナーノーツ/野口久光)
(ライナーノーツ/野口久光)