JAM KA DEUX-1 “衝撃”の『JAM KA』から6年。続編となる『JAM KA DEUX』(以下『ジャム・カ・ドゥ』)は,従来の小沼ようすけギター・サウンドだけではなく,あの『JAM KA』からも遠く離れてしまっている。

 小沼ようすけは,一体どこまで走り続けるつもりなのか? 『ジャム・カ・ドゥ』は,もはやテクニカルなギターでもグルーヴィーギターでもなく,というか『ジャム・カ・ドゥ』はギター・メインのアルバムではない。
 主役はカリブのリズム「グオッカ」である。小沼ようすけが凄腕のギターを捨てて,リズムの妙で勝負している。

 そう。小沼ようすけが『ジャム・カ・ドゥ』で表現したのはギターではなく“前人未到の”ジャズなのだ。
 『3, 2 & 1』までは,ジャズ・ギターの可能性にとことんこだわってきた小沼ようすけだったが『BEAUTIFUL DAY』での「ナチュラル・オーガニック」ときて『ジャム・カ』での「グオッカ」推し!

 この変わり身は小沼ようすけがピックから指弾きへ転向した時と似ている。ギター・コンテストで優勝するくらいの最高のピック使いだったのに,それをリチャード・ボナと出会ったがばかりに,あっさりと捨てた。
 小沼ようすけは,もう2度とピックでギターを弾いてはくれない。小沼ようすけは,もう2度と『NU JAZZ』『SUMMER MADNESS』『JAZZ’N’POP』のような音楽はやってくれない。

 だ〜って『JAM KA』でも激変だったのに『JAM KA DEUX』はその上を行っている。小沼ようすけの場合,アルバムをリリースする度にキレイ目だったスタイルが段々と崩れた「グランジ系」ジャズ・ギター。『JAM KA DEUX』では原型を辛うじてとどめているだけで,出来上がりはぐっちゃぐちゃ〜。

 いいや,書きすぎた。申し訳ない。実はぐちゃぐちゃのようで『ジャム・カ・ドゥ』の中身は,しっかりと整っている。スタイルは変われど小沼ようすけ小沼ようすけである。
 『ジャム・カ・ドゥ』は,全部の音の中心に小沼ようすけが鎮座している。“行き過ぎた”『ジャム・カ・ドゥ』ではあるが,小沼ようすけの“突然変異”などではなく,キャリアの延長線上で“行き過ぎた”1枚だと思っている。

JAM KA DEUX-2 イメージとしては『JAM KA』と『JAM KA DEUX』に関しては「小沼ようすけ・特別編」である。
 今まで一度も聴いたことのないジャズ・ギターが聴こえてくる。何だかワクワクして,見たことも聞いたこともない“新しい世界”に連れていってもらったような感覚がする。

 【FLOWING】が実に泣ける。笑顔なのに涙が流れ落ちてくる。真に感動する。【TI’ PUNCH】では「小沼ようすけ流・フレンチ・グラント・グリーン」が登場する。
 「グランジ系」ジャズ・ギターとは身体が自然と反応する音楽である。薄汚れ役の小沼ようすけが超カッコイイ。

 果たして『JAM KA』路線は小沼ようすけにとって,定住なのかお出かけなのか…。次作が本当に楽しみである。

 
01. Moai's Tihai
02. Flowing
03. Terre
04. The Elements
05. Ka Interlude
06. Ti' Punch
07. Duo Ka
08. Dlo Pann
09. Fellows
10. Gradation Part 3 : Heartbeat
11. Pourquoi
12. Beyond The Sea
13. Songe Mwen

 
YOSUKE ONUMA : Electric Guitar, Acoustic Guitar, Fretless Guitar
REGGIE WASHINGTON : Electric Bass
ARNAUD DOLMEN : Ka, Drums, Vocal
OLIVIER JUSTE : Ka
GREGORY PRIVAT : Piano, Fender Rhodes
SONNY TROUPE : Ka
HERVE SAMB : Steel Strings Acoustic Guitar
JOE POWERS : Harmonica
SIMONE SCHWARZ-BART : Poetry Reading
JACQUES SCHWARZ-BART : Acoustic Guitar

(フライウェイ/FLYWAY 2016年発売/DDCZ-2126)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/松永誠一郎)

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