
「アコースティック・バンド」名義としては実に27年振りのライブ・レコーディングとなったのが『LIVE』である。
「エレクトリック・バンド」の再結成時は“2004年最高の話題作”と謳われたものだったが,今回の「アコースティック・バンド」の再始動は静かなもの。寂しいよなぁ。
でも『LIVE』は日本限定発売とのこと。いつも熱狂するのは日本のジャズ・ファンだけのようである。
まっ,そんな世間の無関心など気にしないし気にもならない。とにかく『LIVE』の演奏が物凄い。ここにあるのは紛れもなくピアノ・トリオ史上屈指の大名演集である。
『LIVE』のせいで久しぶりにやって来たチック・コリアのマイブーム。『LIVE』はCDだから良いのだ。これが映像作品となると,画面から時を感じてしまっていけない。
音を聴いている限りではチック・コリアが,ジョン・パティトゥッチが,デイブ・ウェックルが,一向に歳を取っていない。30年前の当時のまんまだ。何なら若返った気さえする。だから感情移入してしまったのだろう。「静かな熱狂」が『LIVE』に当てはまる。
今回の「アコースティック・バンド」の再始動は,チック・コリアにとってどんな意味を持つのだろう。セットリストは往年のレパートリーばかりで新曲はない。単純に同窓会を開いてみたかっただけなのだろうが,その動機とは,離れ離れになった3人の27年間の歩みを確かめたくなったのだろう。
チック・コリアは自分のバンドから独立した後もジョン・パティトゥッチとデイブ・ウェックルの演奏をチェックし続けてきた。最初に「みーつけた」と思ったあの頃の感動が,近年甦ってきたのかもしれない。
回り回って再び「みーつけた」とガッツポーズ。チック・コリアとピアノ・トリオを組んできたベーシストとドラマーは数多くいるが,これほどまでスムーズに連動するリズム隊は「ジョン・パティトゥッチ+デイブ・ウェックル組」しかない,と断言する。
そう。「アコースティック・バンド」と来れば「余裕しゃくしゃくで息ぴったり」がトレードマークであったのだが,27年間“超絶技巧”を維持し発展させてきたという「テクニックへの更なる自信」が,最高のチームを組んで一層の高みでの連動を実現させた最大の理由であろう。
とにかくチック・コリアの最良の部分だけを聴かせてくれる“ピアノ・トリオの雄”に違いない。
管理人は思う。「アコースティック・バンド」解散後のチック・コリアのピアノ・トリオって一体何だったのだろう? その答えとは「アコースティック・バンド」を超えるためのチャレンジではなかったのか?
チック・コリアとしては「アコースティック・バンド」を超えた瞬間を何度も感じたはずである。『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』でのジョン・パティトゥッチ+ヴィニー・カリウタ組。『過去,現在,未来』でのアヴィシャイ・コーエン+ジェフ・バラード組。『ランデヴー・イン・ニューヨーク』でのミロスラフ・ヴィトウス+ロイ・ヘインズ組。『スーパー・トリオ』でのクリスチャン・マクブライド+スティーヴ・ガッド組。『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』でのジョン・パティトゥッチ+アントニオ・サンチェス組。『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』でのエディ・ゴメス+ジャック・デジョネット組。『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』でのクリスチャン・マクブライド+ジェフ・バラード組。『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』でのエディ・ゴメス+アイアート・モレイラ。『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』でのアドリアン・フェロー+リッチー・バーシェイ組。『フォーエヴァー』でのスタンリー・クラーク+レニー・ホワイト組。『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』でのエディ・ゴメス+ポール・モチアン組。『トリロジー』『トリロジー2』でのクリスチャン・マクブライド+ブライアン・ブレイド組。

チック・コリアはこれからも浮気を繰り返すことだろう。ただしチック・コリアの中での“正妻”は決まっている。チック・コリアが,どこをどう切っても間違いを犯すことのない絶対的に信頼を寄せる絶対服従の“正妻”は決まっている。
そう。チック・コリアがピアノ・トリオを組むに当たって,もう2度と手放したくない,離れることなど考えられない“正妻”ベーシストとはジョン・パティトゥッチであり“正妻”ドラマーとはデイブ・ウェックルである。
ついでに書くと,ジョン・パティトゥッチとデイブ・ウェックルが演奏すればこそ一際輝く【MORNING SPRITE】と【HUMPTY DUMPTY】。この2トラックも「アコースティック・バンド」の“正妻”である。
『LIVE』での【MORNING SPRITE】と【HUMPTY DUMPTY】こそが「アコースティック・バンド」史上最高峰! このピアノ・トリオ,一体どこまで上り詰めるねん!
CD1
01. Morning Sprite
02. Japanese Waltz
03. That Old Feeling
04. In a Sentimental Mood
05. Rhumba Flamenco
06. Summer Night
07. Humpty Dumpty (Set 1)
CD2
01. On Green Dolphin Street
02. Eternal Child
03. You and the Night and the Music
04. Monk's Mood
05. Humpty Dumpty (Set 2)
06. You're Everything (featuring Gayle Moran Corea)
CHICK COREA AKOUSTIC BAND
CHICK COREA : Piano
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums
(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2018年発売/UCCJ-3040/1)
(☆SHM−CD2仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,ジョン・パティトゥッチ,デイヴ・ウェックル,ロビン・D.G.ケリー)
(☆SHM−CD2仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,ジョン・パティトゥッチ,デイヴ・ウェックル,ロビン・D.G.ケリー)
コメント一覧 (2)
最近はまたChick Corea熱が再燃してきておりまして、聴き返しまくっているところです。ずっとでしょうか。
もちろん『LIVE』もチェック済みです。
なんなんでしょうかね、このキラキラしていて、幸せさに溢れている感じは。もちろん30年のブランクを全く感じないどころが演奏の密度がドンドン濃くなっているような感覚、年々洗練されていくこの感じ。
やっぱ自分にとってのNo.1ピアニスト、No.1ベーシスト、No.1ドラマーの三位一体ですし、“浮気性”のChick Corea本人も「トリオを組むならやはりこいつらだ!」と思っている事でしょう。最高でないわけがありません。
1stのような初々しさも、『Alive』のような”カオス“さもないですが、それ以上に大切なものが沢山詰まっているのがこの『LIVE』なのでしょう。マイフェイバリットに即仲間入りした一枚です。
「なんで日本限定発売なんやね〜ん」とツッコミを入れたくなります。世界中のみんなが恋い焦がれるアルバムになったことでしょう。
そしてもう一つ。
先日Chick Coreaの公式TwitterでElektric Bandのニューアルバムの存在がアナウンスされました。
2005年の『To The Stars (Tour Edition)』から約15年の沈黙を破っての新作となるわけです。
これを管理人さんに報告しないわけにはいきません。いてもたってもいられません。
詳細はまだ発表されていませんがもう既に心を躍らせている自分がいます。
CCABの次はCCEBです。止まっていた時間が一気に動き出した気分です。
相変わらずといいますか,人生休むことなくチック・コリアを楽しんでおられるようですね。
私もドム男さんに追い付け追い越せで,この夏は人生何度目かのチック三昧でした。
本当にマルチな天才の持ち主であって,どんなプロジェクトに取り組もうとも,絶対に結果を残すところがチック・コリアの真骨頂。マイルスからの影響があるにしてもマイルスを超えた一番弟子に違いありません。
私がここまでアコースティック・バンドを推すのは,多分にカシオペアを始めとするテクニカル・フュージョンの影響があると思います。ジョン・パティトゥッチ+デイブ・ウェックルのキメ&キメが大好きで思わず声が漏れ出てしまいます。
それにしても「なんで日本限定発売なんやね〜ん」。世界中のみんなが恋い焦がれる隠れ名盤の1枚として評価されていくことでしょうねっ。
ついにCCEBも再始動ですね。この情報はチェック済でありました。まずはアルバム。そしてLIVE。日本ツアーがあれば見に行きます。ドム男さんも!?